こなつ

僕らの先にある道のこなつのレビュー・感想・評価

僕らの先にある道(2018年製作の映画)
3.8
2018公開の中国映画。
台湾出身の女優レネ・リウ自身の原作を自ら映画化し、監督デビューした作品。

「13億人の妹」と呼ばれ、「ソウルメイト」「少年の君」の演技で魅せたチョウ・ドンユイを観たくて鑑賞したが、初めて知ったもう一人の主演ジン・ボーランもなかなかのイケメンで演技派、中国では人気の俳優らしい。

2007年旧暦の大晦日に北京から遥江に帰省する長距離列車で出会ったジエンチン(ジン・ボーラン)とシャオシャオ(チョウ・ドンユイ)。二人は都会で夢を追いかけていた。恋と別れを経験し、別々の道を歩いていた彼らが2018年の旧暦正月前、偶然に北京へ向かう飛行機で再会する。
初めて出会ってから10年後の再会だった。

10年前のシーンがカラーで、現在のシーンがモノクロで流れて行く二人の恋愛模様。お金はないのに見栄っ張りな若者ジエンチンと金持ちになるために奔走する、小悪魔的なシャオシャオは、どこにでもいそうな都会に憧れる若い二人。そんな二人が自然と惹かれ合うごく普通の恋物語。

二人が住む貧しい集合住宅を上から撮影したシーンが印象的で、薄い壁で仕切られた各部屋にはそれぞれの人生があるのだと感慨深い。

年老いたジエンチンの父親は田舎で食堂を営み、大晦日に息子が帰省するのをただ待っている。「親は子供が誰と結婚しようが、成功しようがどうだっていい。健康で自分らしい人生を送れれば」
そんな親心を疎ましく感じて冷たく振る舞う息子。どこの国でも子を想う親の気持ちは一緒だ。この父親は出番こそ少ないが、必死に働いて子供を都会に送り出し、子供に対して押し付けがましくないが滲み出る愛情を俳優のティエン・チュアンチュアンが抑えた演技でしみじみと観せる。

再会した二人は、ずっと忘れられなかった想いを抱えていたが、既にそれぞれの人生を歩き始めていて戻ることは出来ない。
それでも決して悲壮感が漂うわけではないラストは、青春懐古ストーリーのように温かかった。チョウ・ドンユイは、どんな役をやっても安定感があり、可愛い。

ごめんの一言は大切な人を失う前に。
愛しているの一言はまだ間に合ううちに。

ラストに流れた素敵な名言が心に沁みる。
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