アキラナウェイ

オペレーション・フィナーレのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.6
"ホロコーストの実行人"と呼ばれるアイヒマン関連の作品は、つい手を出してしまうのよ。

アドルフ・オットー・アイヒマン(ドイツ語: Adolf Otto Eichmann)。ホロコーストに関与し、数百万の人々を強制収容所送りにした、ナチス政権下のドイツの親衛隊中佐。

終戦後、逃亡していた彼を追跡し、逮捕へと繋げたイスラエル諜報特務庁(モサド)の諜報員の活躍を描く。

1960年。モサドはナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンがアルゼンチンで発見されたとの情報を得る。諜報員のマルキン(オスカー・アイザック)らは、アイヒマンを捕らえ秘密裏にイスラエルへ連行すべく、アルゼンチンに潜入する—— 。

1961年にアイヒマンは裁判にかけられている事から、結末はわかっている筈なのに、なかなかどうしてハラハラドキドキのスパイ大作戦。

終戦後でも、ドイツ人によるユダヤ人差別はまだ色濃く、アルゼンチンでもドイツ人達が集会を開き、「ハイル、ヒットラー」と連呼する姿には只ならぬ恐怖心を覚える。

知られざるミッションの立役者達。

主演は、「スター・ウォーズ」シリーズの出演で今やトップスターの仲間入りを果たしたオスカー・アイザック。

モサドのメンバーの紅一点ハンナを演じるはメラニー・ロラン。お美しいにも程がある。

偽名で暮らしているアイヒマン。
彼の生活パターンをつぶさに調べ上げ、勤務先から決まった時間のバスに乗り、帰宅途中の彼を拉致する作戦を決行し、何とか彼を捉え、軟禁する事に成功するが…。

「命令に従っただけ」

自ら虐殺の命を下したユダヤ人達に対して同情的な感情を垣間見せる事もあったが、一転して罵詈雑言でユダヤ人を罵る狂信的な態度を見せるアイヒマンにゾッとした。アイヒマンを演じたベン・キングスレーの演技が俊逸。

アイヒマンを飛行機に乗せて、アルゼンチンから連れ出せるかどうか。追っ手がすぐそこまで迫ってきている中でのハラハラ感。

愛する家族を殺した張本人が目の前に居て、その首を絞め殺してやりたいという衝動に駆られながらも、国際的に公正な裁判で罪を明らかにしなければならないという使命感。私情を捨て、正気を保つ事を強いられるモサドの工作員達の心の機微が丁寧に描かれていた印象。

全体的に地味ながらも、史実の裏側を知るという意味での収穫は大きい。