カツマ

キングのカツマのレビュー・感想・評価

キング(2019年製作の映画)
3.9
退路はすでに絶たれていた。それは王という名の果てなき呪縛。疑心暗鬼に苛まれながらも、国を背負わなければならない運命。数奇な偶然と歴史のいたずらが、一人の心優しき若者を血みどろの戦場へと駆り立てる。残るのは悲劇しかないと分かっていながら、彼は人民の鏡として退路なき道を永遠のように突き進む。

年末に向けていよいよ本気を出してきたNetflixが送る特大スケールの大作が堂々登場!ティモシー・シャラメを主演に据え、ジョエル・エドガートン、ロバート・パティンソンといった豪華な布陣が迫力の大河ドラマを画面上で創出した!原作はシェイクスピアの戯曲『ヘンリー四世第1部』〜『ヘンリー五世』から取られており、ドラマ仕立ての悲劇性が過剰なまでに王の孤独を奉るようだった。


〜あらすじ〜

イングランド王ヘンリー四世の長男ハル王子は、王位継承権を持つ正統なる次期国王候補。のはずなのだが、王子は街へ出ては酒を飲み女遊びに興じ、友人のフォルスタッフとつるんでは放蕩の限りを尽くしていた。
そんな折、父であるヘンリー四世の体調が思わしくないという伝言を受け取ったハル王子は渋々宮殿へと赴くも、父から宣言されたのは次期国王は次男のトマスへと継承するというものだった。そもそも父との対立から王位を継ぐつもりなどなかった彼は、それに反対の意を唱えるはずもなかった。
それでも戦地へと果敢に突入しようとする弟のトマスを心配するあまり、ハルは反乱軍との戦場へと単身参戦。反乱分子のホットスパーに決闘を挑み、戦争の鎮圧に貢献した。
戦争が終わり、再び放蕩暮らしに戻ったハルだが、そこへヘンリー四世の死の知らせ、トマスの戦死の知らせが同時に届けられ、ハルはヘンリー五世として即位することを余儀なくされ・・。

〜見どころと感想〜

今作は配信で鑑賞するにはあまりに惜しい壮大な歴史絵巻だ。心優しきハル王子が冷徹で孤高な王となるまでを劇画風の過剰なタッチで描き出しており、否応無しに歴史に流されていく王の姿を悲しみの影を踏ませるかのような非情さであぶり出した。

原作は戯曲なので現実的ではないシーンも多い。劇中では放蕩息子のはずの彼がいきなりそこそこの戦闘をこなせたりするのはかなりの違和感があるのだが、史実ではヘンリー五世は若き頃から戦争経験があり、そのあたりの説明は見事に省かれているようだ。何しろ15世紀の出来事なので、史実とのリアルさを求めるのは少し無理があるのかもしれないけれど。

驚いたのはティモシー・シャラメが王という役どころに意外にもフィットしていたということ。恋愛もの、青春ものが多かった彼だけに、その殻を一つ破った名演とも言えそうだ。脚本も兼ねるジョエル・エドガートンの多才さ、悪役がやたらと似合うロバート・パティンソンのモブ感、もっと出してやっても良かったのでは?と思えたリリー・ローズ・デップなど、キャスト面でも見どころ満載の作品となっている。

ヘンリー五世はイングランドの内乱をおさめ、ランカスター朝の絶頂期を築いた名君ではあるが、惜しくも34歳という若さでこの世を去っている。若くして王としての資質を問われ、尚且つそれに応えた彼の魂の叫びとは壮絶なものだったはず。中世の生々しい戦争描写と相まって、彼の苦悩が徐々に透けてくる非業の一編として記憶に刻まれた作品でした。

〜あとがき〜

ネトフリが年末商戦に向けてアクセルを踏み始めた、そのオープニング的な作品でしょう。この後もアイリッシュマン、マリッジストーリーなど注目作が目白押し状態なので、ネトフリ作品のパワーはいよいよ巨大なものになってきています。

今作はめでたく劇場公開もされていますが、壮絶な戦闘シーンもありスクリーンの方が完全に映えるでしょう。題材としてはやや古いものの、新鮮なキャスト陣と練られた脚本により、シェイクスピアの戯曲に新たな息吹きを吹き込んだ作品と言えそうですね。