すずや

ビューティフル・ボーイのすずやのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.2
やっと観れた…君の名前で僕を呼んでの頃からファントムさんが推してたし、本当にここまで遅くなったのが不覚。

"すべてを超えて愛してる"
(I love you more than everything)

このセリフとても陳腐だな〜と宣伝を見ながら思っていたし、実際これで惹かれて観に来る人がいるのかな…とちょっと批判的に見てた。
でも観終わった今なら、これ以上にこの映画を表す的確なフレーズはないと自信を持って言える。"すべてを超えて"このセリフ以上にこの映画のメッセージに通ずるものはない。

理想の息子とありのままの息子のギャップに悩む父。
父が求める自分とありのままの自分の狭間に閉じ込められた息子。
このふたりが悩み、ぶつかっていく親子のストーリーだった。
父は息子が薬物なんかに染まってしまったことが受け入れられない。それをなんとか矯正して、自分が愛した"自慢の息子"に戻そうとするし、それこそが息子のためになると信じて疑わない。だから積極的に息子の人生に関わろうとするし、それで「管理しようとするな」と批判されるわけだ(そこからの展開はしんどいが)
息子は"薬物なんかやらない自慢の息子"が求められていることはわかっているし、実際そうすれば愛してもらえることもわかっている。薬物をやっていると愛されることはない。それでも「これが本当の自分なのか?薬物をやめ続けて、理想の息子で居続けることが本当の自分なのか?」と問うてしまうし、それが本当に正しいことでもないと気づいてしまう。

「父さんは自慢の息子がいないことが不満なんだろう?じゃあ今の僕はなんなんだ!」ってセリフが刺さる。
終盤の「私の娘は死ぬ前から生きていなかった。自慢の娘はどこにもいなかった」ってスピーチは頭がさーっと冷えていって、それが逆説的に「すべてを超えて」を強化してたのが凄いなと思った。

ありのままの自分を愛して。それがこの映画のすべてだった。
すずや

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