柏エシディシ

ビューティフル・ボーイの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.0
ティモシー・シャラメ目当てで観に行ったのですが、鑑賞後パンフ開いて、以前ユーロスペースで観た「オーバー・ザ・ブルースカイ」(大好き!傑作!)の監督のアメリカ映画進出作と知って、喜びつつ、腑に落ちました。

生と死の狭間、愛の尊さと無力さの狭間で、時系列を微妙にずらしながら、2人の人物の心の揺らぎを活写する映画として作風は一貫してます。

音楽が重要な要素になっているのも同じ。
エイフェックスツイン、アモン・トビンらエリクトリック系からモグワイ、シガーロス、ティム・バックリー、ボウイ、もちろんニルヴァーナ。そして、歌唱が印象的なパブロフス・ドッグ。
当初、キャメロン・クロウの脚本監督で企画が動いていたというのもいろいろ頷けます。

薬物依存というと兎角重くなりがち、そして露悪的に、一方的に断罪する様に描きがちだけれど、双方の視点を挟みながら誠実に描いている。
もちろん、褒められた行為ではないけれど、人間なんて生きている以上、大なり小なり何かに依存して生きているものだと思うし、誰しも心の弱さや醜さを抱えて生きている。
その事を忘れ、認めようとせず、苦しんだり、戦っている人や家族を受け入れない人間や社会であってはいけないと、昨今の日本の風潮も含めて、考えてしまった。

本作においてはデビッドとニックのふたりのそれぞれの回顧録を元に作られ、親子での共作やニックは脚本家としても活躍している模様(「13の理由」観なきゃだな)。少なくとも、創作という行為が家族を繋ぎとめ、ニックの生命も繋ぎとめている現在に希望を持ちたい。

知性と慈愛をにじませるスティーブ・カレルと「ER」でお馴染みのモーラ・ティアニーも好演してます。
柏エシディシ

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