私は鬱の治療のために、依存性の高い抗不安剤を投薬されている。服薬量は定められているが、それを超えて摂取したいと思う日は少なくない。アルコールと組み合わせると気分が高揚する。その快感から抜け出せなかった時期が私にもあった。今でもその癖が完全に直ったわけではない。以上のようなバックグラウンドゆえに、終始ニックと自分を重ね合わせていた。彼の心中や行動はよく理解できる。もちろん、彼ほどに苦しい経験をしているわけではないが。父親デヴィッドは様々なアプローチを試みて、失敗する。しかしどんな人間であろうと、その場その場で正しい選択をできるはずがない。ましてや薬物依存など専門家でも対処が難しい。彼は確かにニックを愛し、それを言葉にして伝えていた。そして愛のために動いた。それだけで十分に素晴らしい父親ではないだろうか。私もそのような親の元に生まれたかったものだ。
