こまだこま

ビューティフル・ボーイのこまだこまのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.0
薬物依存の息子と、彼を取り巻く家族の重たい物語。万人に受け入れられる作品では無いかもしれないけど、私はとても好きでした。
"更生"って口で言うほど簡単でなくて大きな苦しみが伴うし、誘惑や弱さに負けてしまうのは当たり前だとも思う。人間なんだもん。弱いじゃんか。
心にぽっかり空いた穴は薬物でもアルコールでもその他の快楽ではなかなか埋まらなくて、仮に一時的に埋まったとして根本的にはそこに有り続けるんだと思う。何かで穴を埋めるのではなく、その穴とどのように対峙して一緒に生きていくかが課題だと思う。生きていく上で穴を完全に無くすことは、主人公のニックのような人間には不可能なのではないか(そして多分私個人もそちら側の人間である)。
あとは人を援助するということについても考えさせられた。父はニックのことを助けようと本当に素晴らしいくらい献身的だけれど、援助職にはcan'tって概念もきちんと存在する。気持ちだけでは相手を救えない。救う道しるべを指し示すことや、比喩にすると手すりになることはできても、実際に立って歩みを進めていくのは相手自身だからだ。そのことに気づかされた父は、物語の序盤と終盤でニックに対する姿勢を変化させていた。強くてすごいことだと思う。can'tをしっかり受け入れることも大切なんだな。
映像も音楽もどちらも美しくて、サントラを聴いて余韻にひたっています。ジョン・レノン、Bowieの"Sound and Vision"、ニルヴァーナの曲などなど、最高すぎる。
素敵な作品だった。
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