今泉力哉監督作品ふたつめ。角田光代の描く世界がそのまま映画になったような脚本が見事。
普通さとエキセントリックなところが同居したテルコという角田光代らしいキャラクタを、岸井ゆきのがきちんと立体化していた。雰囲気が印象的な若葉竜也はじめ他の役者もそれぞれに際立ち、全体としてよかった。
マモルとの間に関係性が築けていないから、自分で作り出した歪んだ仮想関係の中で自分自身を振り回してしまうテルコ。彼に対する愛だったはずのものに執着し、自分と彼の差を失くそうとする「彼になりたい」という表現は不気味だけど切ない。別れてからもなお、というラストは、現実でも人の心の中ではあり得る話。