エミさん

愛がなんだのエミさんのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
3.7
TIFFにて。好きになってくれない男に盲目的に全力で向かっていく28歳女性の恋の行方を描いた作品。原作は作家角田光代氏の小説。

今泉作品。去年もTIFFで観ましたが、今年も良い作品を持ってきてくれて嬉しかったでした。もどかしい人生の描き方が緻密で大好きですし、キャスティングも良い所を突いてきて洒落てるなぁぁって思いました。

マモル(成田凌)を好きなテルコ(岸井ゆきの)。スミレ(江口ノリコ)を好きなマモル。テルコの親友ヨウコ(深川麻衣)。ヨウコを好きなナカハラ(若葉竜也)。みんな何処か心が浮いている。個性が無いわけでは無いのに、自分が在るような無いような不思議なキャラクター達ばかりだ。好きなものへの執着は有るのに、何がいいのかは分からないし、自信だって無いし、時には淋しさだって感じたりする。

『愛』なんて、全ての人が欲しいと思うのに誰にも容易には語れないものだ。『愛こそすべて」って曲があるくらいだが、果たしてそうであろうか?

私が若い頃は、全力でぶつかっていく奴が多かった。トレンディードラマ全盛期だったし、TVでは日常茶飯事に色々な事を告白しまっくていた。何でもベストを尽くすよう叱咤されたし、当たって砕けろとか、根性見せろといった言葉もあって、恋も仕事も全力を見せること、それが『骨のある奴』と賞賛までされていた時代だ。そんな時代も通ってきた私には、相手に思ったことをハッキリ言うことを言わずに何となくやり過ごしてしまう彼らが、もどかしくて仕方ない。傷つけるのが怖いのか、傷つくのが怖いのか…。思いやりというわけでもなく、言葉を加味しているのとも違う。でも全く理解出来ないというわけではない。みんな、世間で言われる良いとか悪いとかという基準ではなく、自分なりのものさしで一生懸命に、もがいて生きている姿だった。

風呂屋の仕事仲間(片岡礼子)が、「過ぎてみればどってことないのに、それが全てって思い込んでしまうのよね」ってテルコに言うセリフ。その通りだと思う。だけど、そんな風に諭さないで欲しい。いつの世でも、大人たちは不安定な若者に、『将来』を焚きつけてくるが、たとえ『今』が地に足がついていなかったとしても、答えはたくさんの寄り道をして自分で探した方が面白いからだ。