しどけ梨太郎

愛がなんだのしどけ梨太郎のレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
5.0
原作未読。

愛がなんだ。愛ってなんだ。

この映画で一般的として扱われている愛は、双方向的愛だ。そんななかで、一方通行的愛3人衆の恋愛が描かれる。
一方通行的愛のエゴイスム(≒自己愛)に気が付いたナカハラ、気が付いているが気にしないテルコ、そもそも気が付いていないマモル。
ナカハラはすみれの言葉により、そのエゴイスムが悪いものだと思う。テルコはまったく思わない。だから、自分がマモルになりたいと思う。それが自分の愛情を満たすことのできる最良の方法だから。そう思っていたテルコのあのラストショット。あれが幸せに見えるか不幸せに見えるかは鑑賞者しだいだろう。

この映画を通して投げかけられているものは、「愛って他者のためのものなのか」ということだと思う。自分のために愛があってはいけないのか。他者を愛することで自分を愛する。それは他者を媒介として自分を愛しているのであり、言ってしまえば他者の存在を道具にしてしまっている。これは今の社会だと、悪いことだと言われることだろう(「他者を道具とみなすなんて!」)。でも、それで悪いか?ってのがテルコの「愛がなんだ」なんだと思う。もし他者のためにしか愛がないなら、そんな愛はわたしには関係ない。実際、終盤でテルコが取る行動ははたから見るとマモルを思った行動だが、実は自分がマモルとずっと一緒に居られるようにするための行動である(トリュフォーの『突然炎のごとく』を思い出した)。そういった自分のための愛をあなたは愛と呼べますか?とこの映画は尋ねてくるようだ。様々な人がこの映画を観てその狭い恋愛観が揺さぶられることを願う。

それにしても、オフビートなギャグや不協和音スレスレの笑いの扱いが本当に上手い。公園のおっさん達とか。あと、象をふたりで見てる最中にテルコが泣き始めた理由、みなさん予想できました?想像の斜め上だったのでぼくは変な笑いが出ました。

マモルには料理を作るのに、自分はカップ麺で済ませる様子とか棚にカップ麺が積んであるショットとかをさりげなく見せてくるのが手堅く上手い感じがした。