ほのか

愛がなんだのほのかのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
3.9
愛がなんだ 恋がなんだ。
確かに初めは恋だった。手が綺麗な人だなと思った。どこが好きかと言われたらたくさんは出てこなかったけど、いろいろしてあげたくなる人で、ずっと側にいたいと思える人だった。
好きになってほしい 愛してほしい 大事にしてほしい。
全部テルコがまもちゃんに向ける気持ちには当てはまらない。そんなこと彼女はまもちゃんには望まない。
テルコはただ"田中守"になりたいだけ。



って、こわ〜ッッ!!!
最後まで観て、バババーーッて浮かんできた一本の線があまりにも怖くて、こいつぁやべえ女だよ…って感想しか出てこない。
ファントムスレッドとか寝ても覚めてもの女たちもやばいな!と思ったけど、あのひとたちは「自分は普通の人が好きな人に拒絶されたときの対応とはズレた対応をするけど、この道から外れることはしない、だって、わたしが彼のことをこの世で1番愛してるもの。誰がなんと言おうとわたしはわたしの道を行く」って感じだった気がするんですが、一方テルコは「なんでこのままじゃダメなの?愛し愛され合うことがそんなに重要?わたしが彼のことを大事に思うこと・私が彼でありたいと思うことを曲げなければいけない理由なんて全部綺麗事でしかない!ね?そうでしょ?だからあなたもそのままでいなよ!!」って言ってくるわけです。ね、これはこれでまたやばいでしょ。冷静に考えて「わたしはまもちゃんになりたいの」ってなに…?「もしくはお母さんか、お姉ちゃん。いっそのこといとこでもいいの!」ってまさにぶきみちゃんそのもの。人としてまもちゃんみたいにありたいってことだとしても(いやたぶんこんなぬるい気持ちじゃなかった気がするんだよなあ。ほんまに純粋に"田中守"になりたいって言ってるように聞こえたん。不純な純粋やけど。)、映画中ではテルコが感じるまもちゃんの人としての魅力もあんまり言い表されてなかった気がするからなんでそうなったのか不思議なまま。すき→彼が私から離れていきそう→彼になりたい→彼に好きな人ができる→執着がテルコのなかで繋がるんやからテルコはかなり捻れに捻れに捻れまくった人間なんやと思う。
この映画、宣伝が上手だったなあも思わざるを得なかったです。いつまでもはっきりしない関係、彼にすきな人ができる。の2点だけを前情報として予告でみてたので、てっきりもやもやしながらも最終的にはちゃんと離れられるのかと思ってたら、まさかテルコのなかに「愛がなんだ」の先があるとは思いもしなかった。そ、そっちか〜!やられた〜!テルコの不毛で、いいように使われてるだけの恋をみてたのにいつのまにかテルコは一歩先にいて最後の最後でそれに気づくだなんて。ドン引きしながらも映画としてはなかなか上手い作りだと思いました。


まもちゃんとテルコ、中原くんと陽子ちゃん、まもちゃんとすみれさん。みんな上手いこといかない恋愛を抱えてる。離れようとしたり、でもやっぱりすきだからってなったりするひとがいて、あっやっぱりそれが普通やんな?と思うと同時にテルコの異常さが際立ってゆく。そんな彼女と岸井さんの女の子を纏った女性の演技がぴったりでよかったです。ワンピースにパーカーとかが似合う反面、デートで着てる、たぶんちょっと頑張っておしゃれしてる服がわたしにはちょっと着られてる風にみえて、気持ちが空回りしちゃって頑張りすぎてちぐはぐになっちゃってるのかなとか考えるのが楽しかった。