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愛がなんだのt0moriのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.0
評判を聞いて慌てて鑑賞。
なるほど、これは思いのほか深い作品だった。

映画の中では男女の話だが、同性同士でもあり得る話。アイデンティティが確立される過程では、依り代とでも言うべき自己を重ねる対象が必要な時期は誰しもあり、主人公テルコを通してそれを描いていると感じた。

ブレずに「マモちゃん好き!」を貫くテルコは、ともすればストーカーと紙一重だが、だからこそ「どうしてそんなに?」と観客に鏡のように問いかける存在になっていて、物語や映画と観客を繋ぐ構造が巧いと感心してしまった。
テルコの行動や考え方に疑問を感じたり共感したりと、その都度観客に沸き起こる感情が、そのまま観客自身のアイデンティティ確立までの道程を確認するかのような、人生の深淵を縁から覗き込むような、そんなきっかけを産む映画になっていた。

かくいう自分は、20代まで、高校時代に精神的に依存していた友人の幻から、逃れられずにあがいた記憶が掘り起こされた。観客の人生に何かしらの影響を与える作品は、ポジティブであろうがネガティブであろうが、優れた作品だと思う。

しかし、江口のりこさんと言えば、自分はテレビドラマ『名もなき毒』での原田いずみ役の怪演で認識した方だが、まさか憧れの対象として描かれる事があるとは。本編中は思い出せず、どこで観たんだっけ?と気になっていた。
彼女や主演の岸井ゆきのさんはもちろん、その他、脇を固める役者陣、皆、リアリティがあって、それでいて嫌味や嘘がない感じがとても良かった。
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