※ネタバレ注意
恋愛映画の大傑作。
独特の雰囲気で、一筋縄にいかない複雑な恋愛模様をリアルに描く今泉監督の作風が良い味を出してます。
まず、脚本が素晴らしい。
セリフの言い回しだったり、話す時の目線の動き、表情の微細な変化が凄くリアルで、思わず引き込まれてしまうほど作品の世界観が魅力的。
それらを演じきる役者の演技も素晴らしい。
特に、若葉竜也の繊細すぎる神演技には度肝を抜かれました。
彼が主演の今泉監督の新作「街の上で」が楽しみで仕方がない。
キャラクターも驚くほどリアルに描かれてる。
テルコの狂気的とも言えるマモルへの依存ぶりを極度のメンヘラだと感じる人がいるのは分かるが、個人的にはその言葉だけでは片付けきれない魅力を感じたし、
テルコのことを無性に応援したくなった。
マモルも、すみれさんも、ナカハラくんも、葉子も、一言だけで言い表せれない複雑な人間味があって、
人それぞれの性格と何気ない言葉が、時には人を傷つけてしまうこともあるし、
この人がこう言ったからこの人が悪いとかそういう単純な白黒で分けきれないのが、
なんとも人間らしい。
そして、心情の起伏と変化のせいで、愛が上手く噛み合わなくなる切なさも込められてる。
テルコの愛し方を、
自分の気持ちをぶつけてるだけの自己中なメンヘラだという人もいれば、
一途な愛情だと感じる人もいると思う。
人の愛し方って人それぞれあって、その人なりの最大限の愛情が、正しいのかなんて誰にも分からないし、
どんな愛のあり方が正解かなんて、潜在的にある固定概念を崩してしまえば、誰にも分からなくなる。
でも、時には自分自身を見つめ直して、愛する人の感情を理解して、
勇気ある決断と行動をすることも必要なのかと。
それが、
テルコ→マモル→すみれさん
という一生噛み合わない一方通行な関係と
ナカハラ→葉
くん←子
という幸せになれた相互関係の差をつくった所以なのかなと感じました。
(すみれさんが実はバイセクシャルで、テルコのことが好きだった可能性もあるから、
三角関係だったのかも)
テルコがマモルになるラストカットには、もちろん狂気を感じたけど、その反面、彼女なりの愛を否定しきれない複雑さもあって、観た後、思わず呆然としてしまいました。
ここまで余韻に浸れて、考えさせられる良質な日本の恋愛映画は本当に久しぶり。
恋愛映画とはこうあるべきだ。
そう訴えたくなる大傑作。
“幸せになりたいっすね”
ストーリー ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
演技 ★★★★★
映像 ★★★★☆
演出 ★★★★★
音楽 ★★★★☆