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メリーのarchのレビュー・感想・評価

メリー(1931年製作の映画)
3.6
「この台本は未完成だ」

ヒッチコック『殺人!』のドイツ版らしい作品。当時は言語を変えるためにセットを同じままに役者を変えて再撮影なんてことをしていたらしい。その方が安く済むそうだ。
『殺人!』はまだ未見のため比較は出来ないが、本作はサスペンスではなくミステリー、謎解きの作品になっている。犯人の心理に追従するならば確かにサスペンスだが、本作の重きは犯人の心理状態ではなく、犯行の内容と真犯人にあるからだ。

ただヒッチコック節はしっかりあり、台詞のダブルミーニングや台本を使った洒落た落とし所などもハマっている。また法廷シーンのある作品として『ふしだらな女』『マンクスマン』に次ぐ作品でトーキーのおかげもあり、水を得た魚のようにセリフが多い冒頭もいい。その台詞量により、相対的に陪審員達の話し合いでの沈黙が際立っていた。

ヒッチコックらしい作品とは言えないが、空中ブランコシーンなど見所が無い訳では無い映画であった。
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