ボブおじさん

永遠に僕のもののボブおじさんのレビュー・感想・評価

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)
3.6
1971年ブエノスアイレス。何の躊躇もなく留守宅に侵入し欲しい物は何でも手に入れる17歳の少年カルリートス。学校で出会ったラモンと意気投合したカルリートスは、二人でさまざまな犯罪に手を染め、やがて殺人を犯す。

〝黒い天使〟と呼ばれ、アルゼンチンの犯罪史にその名を刻む連続殺人犯カルロス・ロブレド・プッチの実話を基に描くクライム青春映画。

主演のロレンソ・フェロの美少年ぶりが話題となり、美しき犯罪者が繰り返す強盗・殺人がポップに描かれる。

人の命や金品などの目的のためではなく、ただ自分が生きているという証を求めるために犯罪を繰り返すカルリートス。自身は自分の行為に対して罪の意識を持っていない。ただ感じるままに、ダンスを踊るように優雅に犯罪を重ねていく。

そんな彼はラモンとの出会いによって自らのハートに火をつけることになる。一方のラモンもカルリートスの美しい容姿と平気で盗みをする中身とのギャップに魅せられていく。

この映画を見た後、多くの人はネットで実際の事件を検索し、二つの感情を抱いたのではないだろうか。

ひとつは11人以上の殺害を実際に犯した彼に対しての怒り。そしてもうひとつは、彼の美しさに対する驚愕。そう実際の犯人もまた、映画の主人公さながらの美少年だ。

間違いなくこれは異常な事件だ。犯人はたとえ未成年であっても、到底許されるものではない。

しかし何故だか映画を見る中で、男女問わず多くの人が彼の魅力に引かれてしまう。映画のみならず、現実の世界でも彼を支持する人が少なからずいたという。

もし彼が天使のような美貌の持ち主でなければ、この事件は単なるシリアルキラーの事件として扱われ、たとえ映画化されたとしても全く別のアプローチで描かれたであろう。

もしかしたら連続殺人のような異常な犯罪と類い稀な美しい容姿が合わさる時、人は密かに興味を抱き魅了されてしまうことがあるのかもしれない。

恐ろしい事件とは裏腹に70年代の音楽が情熱的。車やファッションも色鮮やかで華やかに画面を彩る。


2019年12月劇場にて鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。