未島夏

永遠に僕のものの未島夏のレビュー・感想・評価

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)
3.8
※青山シアター レビュアーオンライン試写会にて鑑賞



思春期で等身大に思い悩む少年を掠めるスリルと血の匂い。

純粋と好奇心の暴走、その矛先が社会の秩序や他者の無理解の窮屈によって少しずつ捻れた先に待つ惨劇の連鎖。
その顛末を見届ける、あまりにも繊細な犯罪映画。



乗っけから自分を神の使者(スパイ)だと語りながら"周囲を気にして"盗みを働いたり、盗みがバレない様に嘘を繕っていたりと、自由を謳いながら社会の秩序に縛られて生きている様が全開。

窃盗団の一員になっても、男を愛しても、殺人を犯しても、何処に行っても何かに縛られる現実は変わらない。



そんな困窮した日々の中、愛を拒まれた事によるフラストレーションが繊細な彼の衝動を煽り、現実を現実と思えぬ感覚の麻痺を引き起こし、やがて無自覚な殺人鬼へと変貌する。

一見涼しげにも写る彼だが、全てが『冗談』だとどこまで本気で思っている、いや思えているのか。



窮屈を強いる現実の中、彼は何度も自由を謳うが如く軽やかに踊ってみせる。
その姿に宿る内面の差異が決定的となるラストで、観客は皮肉にも怪物の様に見える彼の人間性を目の当たりにする。

肝心なのは彼の容姿に魅了される事でもなければ、彼の行動を理解する事でもない。
彼が思春期とジェンダーの複雑な交錯に揺れる『普通の人間』であった事を受け入れる事が重要だ。



「美しき少年のスリリングな魅力が最高!」的触れ込みでこの映画に触れた観客が、少年の胸中にある深淵を少しでも覗く。

彼が持つ美しさ、憂い、凶暴性、その全てが自らにも宿っているのではと微かに感じる。

少年の美しさが彼の罪や葛藤に全く関係ないと気づく、その瞬間の為に全てが費やされる「美しき映画」だ。