このレビューはネタバレを含みます
宣伝で煽ってるような謎解きサスペンスみたいなのは期待しない方が良いと思う。
ただただ切ない男のドラマだった。
秀逸なのは一見メインのドラマのように見える誘拐事件が実は本筋ではないというところだ。
主人公アスガーがどういう男なのかが物語が進むにつれて明かされていく。
理知的で冷静そうな見た目とは裏腹に、うまくいかないとイライラして汚い言葉を吐き大声を出す、すぐ物に当たる、強引で、思いつきでアドバイスを言ってしまう。すぐ感情的になるダメな男だと言うことがわかっていく。
挙げ句の果てに過去に正当防衛を利用して人を射殺していた——。
そんな彼が自分の正しさ、自分は善人なんだと証明したいがために何とか誘拐された女性を救いたい。助けたいと思う。でもそこでもまた決定的な(犯人を間違える)ミスを犯してしまうのだ。
絶望の淵にある彼とそして精神を病んだ女の対比が泣ける。2人とも上手く自分と付き合えない者同士なのだ。彼女が死ぬ事は自分が死ぬことなのだと感じたのかもしれない。だからこそ彼は最後の最後に本当の自分、ダメな自分を彼女にさらけ出したのだ。死んで欲しくない。それをされたら俺は。
彼女が助かった事を知った時の放心状態のアスガーの顔。彼は生まれ変われるだろうか。裁判で本当の事を言うだろうか。
