河豚川ポンズ

THE GUILTY/ギルティの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
4.2
電話越しに罪と向き合う映画。
デンマークの映画といえば激シブながらどれも名作ぞろいというイメージだけど、今回のこれもなかなかにすごかった。
批評家受けもオーディエンススコアがどちらも高いのにも納得。
でもハリウッドリメイク版は別に要らないかな…

警察官のアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)はとある事情で緊急通報指令室のオペレーターに就いていた。
とはいってもかかってくる電話は、麻薬常習者や酔っ払い、些細なことで電話をかけてきたりと退屈しきっていた。
しかし、それもどうやら明日まで、それで現場に復帰できるだろうと思い電話番を続ける。
そんなところにいつも通り女性からの緊急通報が。
だがいつもと様子が違う、慎重に話してみるとイーベン(イェシカ・ディナウエ)と名乗るその女性は誘拐され、今まさに犯人の車に乗せられているというのだ。


88分間、ただ一人の男が警察のコールセンターで電話し続けてるだけなのに、どうしてこんなにも面白いのか。
いわゆるワンシチュエーションものというやつで、「フォーン・ブース」や「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」「search/サーチ」とかみたいな感じ。
画がほとんど変わり映えしないので、完全にストーリーテリングにすべてがかかってくるんだけど、見事にそれをやってのけてきた。
誘拐されたという女性からの電話を皮切りに、少しずつ見えてくるその事件の全景。
画面が変化しない分、観客もアスガーと同じように電話越しの音を拾い、登場人物の言葉に耳を傾け、いったい何が起きているのかを探ろうとしていくことで、気づけば自然とストーリーの世界に没入していく。
そしてそれはアスガーの心の内に抱えるものと次第に繋がっていき、最終的にこの映画のストーリーの大きな流れへと変わっていく。
まあぶっちゃけオチが読めないこともないけれど、それでも最後のあたりなんかは「セブン」みたいな恐ろしささえあると思う。
しかしこの映画の中でそれを表現できるのはアスガーの声色と表情、仕草だけ。
低予算の極みみたいな設定だけど、それに対して主演のヤコブ・セーダーグレンに求められるものはとてつもなく大きい。
それをこんなにもまざまざと見せつけられてしまったとなると、恐らくこの人も素晴らしい俳優なのだと直感した。

監督のグスタフ・モーラーはまさかのこれが長編デビュー作。
なんか最近はデイミアン・チャゼルやジョーダン・ピールみたいに、新進気鋭ながらすごいものをいきなり作ってくる人がなんだか多いですね。
この監督もハリウッドで映画を撮るとかは無いかもしれないけども、今作がアイデア勝負でウケてしまった分、この先どんな映画を撮るのかは要チェックしなければ。