上映時間中ずっと主人公が電話をしてるだけ、という何とも尖った作品。
こう書くと語弊がありそうなので補足すると、主人公は緊急ダイヤルの電話番をしている警察官の男性で、誘拐されたと思われる女性からの電話を受け、事件に関わっていく、というストーリー。
なのだが、主人公は電話対応係なので当然部屋からは出ることはできず、ひたすら電話に出たり、とりついだりするだけです。
それが延々と88分続きます。
それだけなのに、これがどういうわけか面白い。
映画というより舞台演劇でありそうな設定の作品です。
面白いポイントはいくつかありますが、一つはやはり異常なまでの「音」へのこだわり。電話ごしで映像が見えないからこそ想像力をかきたてられます。
もう一つは主人公のキャラクター。この映画登場人物もとても少なく、主人公についても直接どういう人物か語られる場面はほとんどないのですが、短いやり取りなどからこの人物が、
・以前は警察として前線で活躍していた
・ある事件を起こしたせいで、電話対応係に左遷され、裁判も控えている。今の仕事にはやりがいを見いだせていない。
・かなり正義感が強く、暴走することもしばしば
ということがわかるんですが、これらの主人公の背景がぼかしぎみに描かれるので、いい感じで興味が持続させられるわけです。
それで映画を見ていくうちに、どうやら実はクライムサスペンスかと思いきや、かなり内面的な物語であることが明らかになる、この作りは上手いなーと思いました。
道理でいつまでたっても主人公は外に出ないし、銃撃戦も始まらないわけです。
こういうアイディア勝負の低予算映画はやったもん勝ちみたいなところがありますから、当面こういう設定の映画でこれを超える作品は出てこないでしょう。