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THE GUILTY/ギルティのmia0708のレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
4.0

人間は五感をフルに使って物事を認識しているが、個人的な感覚として言うならば、視覚に頼り過ぎているとも思う。其々の役割はもちろん違うのだが、単体で言うならば嗅覚が最も脳みそ、或いは細胞の活動を促していると感じている。
そして最も活用出来ていない感覚が聴覚ではないかと思う。
本作はそんな「音」に着目をしている。

緊急指令室にてオペレーターのアスガーが誘拐事件に遭遇する様を描いたサスペンス。
しかし、カメラは指令室の中のみを捉える、故に電話越しの音声だけで状況を把握しなければならないという超ワンシチュエーション。
音と声による断片的な情報と機能しない視覚が不思議な事に〝想像力〟をフル稼動させてくれる。
焦燥と正義感なのか?
予想という願望なのか?〝想像力〟が鮮やかに道を外しにくるから厄介だ。。。

電話のこちらと向こうで逐一変化していく状況を頭の中に写し出してしまうほどに役者の声による演技か見事である。

緻密な脚本が物語るタイトルの意味を理解した時に人間の驕りや愚鈍さを痛感し、更には荒廃した世界が抱える仄暗い孤独に胸が切なくなった。

人生は辛くとも誰かに愛されていたい。という真理に辿り着く深い余韻を残すラストが秀逸だった。

無駄な伴奏がなく、余計な感情を煽らない演出として機能していた。どこまでも観客目線を意識した姿勢に頭が下がる。
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