カナグ

ライリー・ノース 復讐の女神のカナグのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

『ライリー・ノース』(原題:Peppermint)

ごく普通の主婦、ライリーは夫と娘と幸せに暮らしていた。しかしある日、麻薬組織の襲撃に遭い、最愛の夫と娘を殺され、自らも瀕死の重傷を負う。彼女は一命を取り留めたものの、忘れるはずのない3人の実行犯について警察に証言するが、法廷では組織と癒着する関係者たちによって無罪放免にされてしまう。ライリーは組織に復讐を誓い、姿を消した。そして5年後、再び彼女は始まりの地へと舞い戻る。

またまた復讐もの。
女性がメインのアベンジ・アクション映画はまだ少ないが、今回は「たまたま手を出した家の人がヤバいやつだった」ではなく、本当に一般家庭の人が主人公だというところが珍しく感じる。
5年であそこまで洗練された動きになるのか?とは思うまい。彼女は執念でもって過酷な訓練を自分に課したのだとわかるだろう。

アクション面だけでなく、ストーリー展開も面白い。組織と癒着しているのはなにも裁判官だけではない。
警察の内部にも関係者がいると刑事が話しており、誰が裏切り者なのか分からないような演出が上手かった。

ライフルにサイレンサーを取り付け、マガジンを装填する仕草はもはや歴戦の戦士。
それでも無双するわけではなく、しっかり反撃を受けて負傷してしまうのだがそれすら手負いの獣らしく殊更に危険さが増して良い。

そして愛する家族を殺し、罪から逃れた組織の人間達へ銃口を向ける訳だが、その手段を選ばない殺戮ぶりは観ていて爽快感がある。
実行犯を銃殺するだけでなく、家族の思い出の地である遊園地の観覧車に吊し上げ、裁判で無罪放免と判定を出した裁判官を縛り付け家ごと爆破、構成員を次々射撃、組織が儲けた金を全て燃やす……。
いいぞ、もっとやれ!と思ってしまうのは感情移入しているからかもしれない。

かつて友人であった女性から「こんなことをしても娘さんは戻ってこない……」と苦し紛れに言われたとき、ライリーは怒りのまま彼女の頭に銃口を押し付けていたが、このとき私はある俳優のコラージュを思い出した。
「復讐をしてもしなくても、大切な人は帰ってこないのでした方がスッキリするんじゃないかな」
( https://youtu.be/TxOmrFvm1J8 2014年のインタビューの発言を切り抜きネタ画像にしたもの)
もはやネットミームと化している部分はあるが、核心をついた言葉だと思う。

もし、大衆の正義である司法制度がただしく執り行われていたなら、彼女は法に委ねていただろう。
目の前で人を人とも思わないように無惨に家族を殺され、それを省みず罪を罪と見なしていない加害者の姿を知っているので、生命は皆尊いものだと説いたところで意味がないものだ。そして、それを咎めてくれる家族はいなくなってしまったのだから、自分が裁く他はなく、復讐を止める理由ももうない。後は目標のために突っ走るだけなのだ。
だから刑事の「これ以上罪を重ねるな」という懇願を振り切って宿敵の頭に風穴を開けたのだろう。大抵は銃を持つ手を降ろすだろうが、彼女は意志を貫いたという点でしっかり復讐を遂げられたのもポイントが高いと思う。

綺麗に物語が終わっているので、特に続編は望んでいないが、あるとしたら「イコライザー2」的な展開になりそうだ。
カナグ

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