八巻綾

CLIMAX クライマックスの八巻綾のレビュー・感想・評価

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)
3.8
ギャスパー・ノエの新作。打ち上げ会場に集まったダンサーたちが、サングリアに混入したLSDを知らないうちに摂取してしまい、トリップしまくるという内容。

とんでもない問題作ばかりつくっているギャスパー・ノエなので覚悟はしていたものの、やはり胸糞悪いの極みだった(褒めてる)。雪の中必死で逃げようとする女性の映像とクレジットが流れた後、まずはダンサーたちのインタビュー。名前やプロフィール、ダンスへの想いなど様々なことが語られる。ちょっとボーっとしながら見てしまったのだが、ここで顔と名前を一致させておいた方がいい。

その後は、アメリカツアーに向けたリハーサルの通し。ワッキングやヴォーグスタイルを主体とした複雑な群舞が繰り広げられるのだが、一糸乱れぬ統一感というよりは、さまざまなタイプのダンサーが個性を発揮して共存するタイプのパフォーマンス。クランプやフレックスのダンサーもいて、なかなか面白い。

その後、各々サングリアを飲みながらトークしつつ、踊りたい人は踊るというフェーズに入る。場所はどうやら古い学校の校舎で、なんだかガランとした建物だ。会場にいるのはダンサーたちと、元ダンサーのスタッフの女性とその小さい息子。もともと知り合いだったダンサーもいるし、皆リハーサル期間を一緒に過ごしてきたこともあり、それぞれが色々な噂話やジョークなどを言って楽しんでいる。

ここで繰り広げられるトークは、基本的に話している人間ではない人間についての話題となるため、冒頭のインタビューで名前を把握していないとちょっとキツい。このあたりで人間関係をクリアにしておけば、後にトランス状態になった時の各人の深層心理を興味深く見ることができるはずだ。

スタッフの女性は2階に息子を寝かせに行き、ダンスフロアはさらに盛り上がる……が、ちょっと盛り上がり過ぎている。ダンサーのリーダ各のセルヴァは異変に気付き、サングリアに何か混入しているのではないかと疑いを持つ。ここからが地獄のはじまりだ。

みんながドラッグを摂取してしまったと気付いてからは、とにかく堕ちるだけ。もうめちゃくちゃ。ほぼワンカットのような演出で、視点は色々なダンサーに移りながら常に移動する。犯人だと疑われて酷い目に遭う者、嫉妬を買ってボコボコにされる者、セックスを始める者、ただひたすら踊り狂う者など色々いるのだが、「こうなったらイヤだなあ」と思うことは大体その通りになると考えていていい。心底不愉快極まりない展開が、酔いそうなグラグラした映像と共にひたすら続く。あー、気分悪い(褒めてる)。

『ハウス・ジャック・ビルト』もそうだったのだが、なんでこの手の監督は子どもを出すのかね。やりたい放題やりやがって、本当にいい加減にして!(褒めてる) あまりの悲惨な状況に、段々こちらの感覚も麻痺してくる。

うわー、シャレにならないわー……という展開もあるのだが、そのヤバさがグロではないのがキツい。ギャスパー・ノエ、なんて性格が悪いの(褒めてる)。

というわけで、ダンス好きで、胸糞展開に耐性がある人にはおすすめ。ストーリーはあってないようなものだし(というか、ない)、ずーっと不愉快な映画ではあるものの、私は好きでした。