よねっきー

CLIMAX クライマックスのよねっきーのレビュー・感想・評価

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)
5.0
脚本、構成、演技、編集、選曲、撮影、その他どの要素をすくい上げても常軌を逸したイカれっぷり。守りの姿勢に入ることなんて一瞬も無く、100分間攻めっぱなし。ほとんど実験映画みたいなもんなのに、全てが監督の狙い通りにハマってた。全てがおれの神経にジャストフィットした。完璧な映画って、こういうやつのことを言うんじゃないか?それともこの映画にLSD混入してましたか?

ドラッグムービーらしいし怪物エナジードリンクでも飲みながらテンション上げて鑑賞しちゃお〜☆みたいな気持ちで観始めたんだけど、これが幸運だったか不運だったか、人生最悪の映画体験に導いてくれた。次々と悪いことが起きる小舞台に変に集中してしまった。ドラッグムービーはドラッグムービーでも、超バッドトリップ。2001年やトレインスポッティングにあったようなハッピーな感覚じゃありません。狭い地獄の中に閉じ込められ、踊りながらバグっていく人間たちの隙間をジェットコースターで駆け巡る。頭痛と吐き気と果てしない恐怖に、ちょっぴりの幸福感。運動会くらい疲れる。家に帰ってからは小学生のようにぐっすり眠りました。

よねっきーはストリートダンスをやってるクチなんだけど、俺が思うに「ダンス」っていうのは「動きの寄り道」のことだ。普通に歩けば良いところでくるっとスピンして見せたり、ステップを踏んで戻ってみたり、そういう無駄な動きの中にある意外性や面白味こそ「ダンス」だ。だとしたら、この映画も間違いなく「ダンス」してる。踊りまくってる。映画の概念や常識をぶち壊して、有り得ない寄り道をしまくってる。それが芸術になってる。ダンスの映画を撮るってのはこういうことなんだよ。

普通ならカットが入るようなところでもなお撮影を続ける執拗なロングショット。役者の演技がほとんどアドリブっていうから壮絶。カメラにうっかり休憩している役者が写ったりしちゃいけないから、当然カメラのないところでも彼らは狂い続けていなければいけないわけで、つまりこの現場に「地獄」は間違いなく再現されていたわけで…もう絶句。正気じゃない。照明が上手いから構図も色遣いも完璧なまま。素晴らしいの一言。

スタッフロールが序盤、キャスト紹介が中盤に挟まれ、ラストはバッサリとフェードアウト。頭のおかしい構成がこんなに心地良いとは。芸術映画の最先端、恐怖映画の最先端、誇り高きフランスに拍手を!!
よねっきー

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