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殺る女のdm10foreverのレビュー・感想・評価

殺る女(2018年製作の映画)
2.7
【タイトルには偽り無し・・・だけど】

僕は一体何を期待してこの作品を観に行ったのだろうか?
イマイチ思い出せない。別に知英の超絶ファンというわけでもない。駿河太郎は好きだけど、映画を観る目的に選ぶほど・・・っていう感じ。

って言いたくなる位の作品。

物語の設定はそれほど悪くはない。「過去のトラウマ」「復讐」「陰謀」「子供」・・・いろいろおいしそうなエッセンスは散りばめていたのに、肝心の味付けを忘れたみたいな感じ。
ポテトチップのうす塩味を買ってきて、何枚か食べた辺りで違和感。
「・・・っていうか、塩振ってなくね?」という「うす塩味の塩抜き」という致命的なミスを犯したような。

主人公(恐らく愛子:知英)もそうだし、加賀(駿河太郎)も由乃(武田梨奈)もそうなんだけど、「親を目の前で殺された」「孤児院で育った」云々の過去の殆どを単発の台詞で補おうとしていたがこれが薄い。あえて回想シーンを多用せずに登場人物の「今」から「過去」を想像させるというやり方自体は嫌いじゃないけど、それをやるには「相当な背景の作り込み」と「相当な役者の演技力」が要求される。
でも残念だけど、この作品にはどちらもなかった。
よって、最初から最後までどのキャラクターに関しても感情移入どころか「振り」すらも生まれなかった。

特に・・・個人の名前を出して申し訳ないけど、篠原篤さん?始めてみたけど・・・ごめん、下手だわ。喋り方や立ち居振る舞いについては「役作り」と目を瞑るとしても、全くヤクザに見えない。怖くない。「一見怖そうには見えないけど実はサイコパス並みに怖い」とかそういう段階までも達していない。単純に怖くない。演技をしているのかどうかすらわからないくらい浮いている。彼の存在で一気に「大学生の映研あたりが作ったショートムービー」感が増した。きっとあれはあれで彼の味なんだろうけど、今作に関しては全くわからなかった。

ストーリーに関しても「掘り下げ」も「説明」も無いため、人を殺すという事に付きまとう「怒り」「悲しみ」「憎しみ」などが全く感じられないし、そもそも愛子(知英)が何者なのかが最後までわからなかった。ジェイク・ザイラス(元シャリース・ペンペンコ)とコンビで殺し屋みたいなことやってたけど、目的も立ち位置もピンと来ないまま相方犬死。ちなみに彼(彼女?)を誰が殺したのか?何故殺されたのか?最後まで明かされず、触れられず。
お話に「あれも」「これも」を入れようとしたけど、企画止まりのまま映像化しちゃったような作品。まるでカメラの半径3m以内にあるものだけが映像化されたようなもんかな。

折角武田梨奈使ったのにアクションの「ア」の字もなく・・・。そもそも彼女は「演技派」か?ラブシーンといえるほどの体当たりシーンでもないし。「浴衣にピストル」っていうシュールさは何となく伝わったけどさ。ただ誤解がないように言うと、こちらから見せ場のシーンを捜しに行った結果だからね。実際はそれほど際立つようなシーンでもないし。

それにニコラス・ペタスはあんなに簡単に殺せないし、そもそもボディーガードは何しとったん?(笑)。っていうか根本的に、ニコラス・ペタスは一体何者やってん?という。

一応、タイトルに偽りはありません。確かに人を殺しますから。
でも、そこに何の捻りも拘りも感じないまま、時間だけが過ぎていきましたとさ・・・。

どうせなら、ジャケ写からも連想できるくらいの「日活風」なヒリヒリした映像やストーリーが欲しかったな。
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