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ロケットマンの教授のレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
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どうしたって前作「ボヘミアン・ラプソディ」も比較して観てしまうが、本作でデクスター・フレッチャーの映画監督としての力量が明確に出たと思う。

そして個人的には「ボヘミアン・ラプソディ」に乗り切れなかった身として、申し分なく素晴らしいと思った。

家族それぞれの心情を綴る「I Want Love」の巧みさ。「Saturday Night's Alright…」の時間省略の巧みさ。
映画的技巧と物語のエモーションが合致していて否が応でも高まってしまう。

更に、エルトン・ジョンの楽曲の素晴らしさに対して的確なエピソードの配置、そして描かれる家族、友人、恋人たちとの決別や離別と、ミュージシャンとしての成功が反比例している「ロックンロールの罪」への言及の容赦ない描写の対比。

熱狂に対して、さらには「自由」の象徴であるはずのロックンロールが、実に産業的で、拝金主義で、虚飾の幻想でしかないという提示。
それにより実際のエルトンの過剰さやエキセントリックさの理由を紐解いていくつくりとしても上手く機能している。

とにかくそのストーリーテリングの巧さに惚れ惚れするし、物語の奥行きも実にスマートに表現されている。

そして特筆すべきはタロン・エガートンの演技。エルトン・ジョンに容姿だけでなく、歌声までほぼ似せている力量(ハイトーンが出ていないのは愛嬌)によって徹頭徹尾、「エルトン・ジョン」という人物を描いた「映画」に昇華されている。

素晴らしい。
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