みとも

キングダムのみとものレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
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アバンタイトルのCGによる古代中国の勢力説明+ナレーションを見たときにLOtRみたいだなぁと思ったけど、やはり目指してる方向性としてはLOtRやスターウォーズなのかな。ワイプする画面や、農夫の青年が田舎から飛び出して戦っていく中で英雄になるプロットにしても。崖に作られた山の民(MMFRの砂漠や谷にも居そうな仮面デザインが良い)の住居とか、3メートルぐらいある化け物(”演じている”のは元お笑いコンビ・デコボコ団の阿見201!相方は現在爆笑問題マネージャーだ)も、古代中国にはいたのかなとか思えるし(笑)、独自すぎる歴史観というか、刃牙とか昭和プロレスが好きな人はこういうファンタジー・ロマン活劇にはハマるかも。
二人の少年が初めて木の棒を突き合わせると、次のカットでは山崎賢人と吉沢亮になっているという時間の飛ばし方が良いと思ったら、別離の日に月の明かりで最後の剣術の稽古をする二人のシルエットの美しさ、からの山崎に抱かれながら死んでいく吉沢の段階でかなり心を掴まれていた。この二人の関係性は友情、というよりはそれ以上の同性同士の何かを思わせる。
アクションは見応えがあり、道中で次々と刺客が現れる展開、騙し討ちのサスペンスもある終盤の戦闘なども楽しい。
山崎賢人は今までの量産型アオハル壁ドン映画は何だったんだと思う熱演。冷静でありながらも内に炎を秘める若き国王の吉沢亮は一切まばたきをせず超越的で、虚無的で冷徹な将軍は肉体改造したであろう坂口拓(体がでかいし顔の肉付きがいい)、強面がもはやギャグになりつつある六平直政や、LOtRで言えばクリストファー・リーの蛇の舌グリマみたいな石橋蓮司、甘やかされた中二病のガキを演じると最高な本郷奏多も可笑しい。常に笑みを浮かべる大沢たかおの発話、芝居はやや大袈裟だがこのリアリティの中なら有りなのかな。
とりわけ長澤まさみ演じる山の民の女王はフュリオサ×ワンダーウーマンみたいな造形だが、本当に素晴らしい存在感で、ただ彼女が映るだけで涙が出そうになるほど美しくてかっこよった。
敵味方問わず、野太い、腹の底から出ている低い発話、発声で舞台劇風の演技だった(こうした演技合戦の中だと橋本環奈はどうしても拙い)。
好戦的な少年像や彼が道中で襲われる試練、中国ロケといい、どうしてもあの実写『進撃の巨人』を思い出してしまう(独裁政権の打倒という内容から中国資本は得られず、中国人気キャスティングだった三浦春馬だけが残った)。『進撃』もこうだったら……。
ラストシーンもなんかルーク、レイア、ハンのトリオの変形みたいで、3人だけで王の間にいるよりも、皆から拍手されながら山崎賢人と橋本環奈(あのモコモコ服を見るに人間というよりウーキー族だろうかw)が吉沢亮に表彰される場面が欲しいぐらい。佐藤信介監督作の決定版であり、近年のアクション、エンタテイメント邦画の一つの到達点でもあるとわりと真剣に思います。
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