デュプラス兄弟案件。20年ぶりに仮出所したクリス、元教え子の彼を受刑中に支えてきたキャロル。自由を得ても周囲との関係はとても気まずく、２人が育んできた愛と信頼も外ではとても不自由だ。クリスと弟、キャロルの娘、それぞれ渇望する愛とやましさでギクシャクと軋んでいく。不器用で貧乏くじを引いてしまうクリスを演じるジェイ・デュプラスは、不安と衝動と溜め込んだ理不尽を滲ませながら、尚且つ温かみがある。そしてイーディ・ファルコの見せる強さと脆さ、包容力。人間関係の緊張感と対照的に、雨に濡れた街のどこにでもある風景は、ただシンプルに生きたいと思わせる平凡さ。ハラハラさせつつも静かに内に秘めたそのバランスがちょうどいい。『ショート・ターム』以来久々に観たケイトリン・ディヴァーも良かった。それにしても、デュプラス兄弟は兄も弟も「泣く男」である。
