夢里村

斬、の夢里村のレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
4.0
人間同士はコミュニケートできるということを前提にして社会を生きている。ではそれはどこで判断するのか? いろいろあるだろうけど、一つには、表情。アジア人しか出てこないこの映画でそれに言及するのもどうかと思うが、顔が見えているか見えていないかで、意思の疎通が計れるかどうかという判断は大きく変わってくる。とすれば、復讐を誓った中村達也の、あの禍々しいシルエットに人間味を一切感じないのも当然である(中村達也、まじでバケモンだ!)。では人を切ってしまった池松壮亮はどんな相貌を呈するのか? もちろん、そこでいつも結んでいた髪留めは解けていなければならない。
なぜ木の棒切れでの稽古があんなにも長く何度も映されるのか? 真剣であれば、人を斬って仕舞えばそれでお終いなのだ。その対比が、向こうの世界とこちらの世界をたやすく分断する。ぎちぎちと刀を握る音、その重さの音にこだわればこだわるほど我々の世界からは遠ざかるように、冒頭から繰り返されるもどかしい刀のクロースアップは、一閃ののちに池松壮亮をあちら側に連れ去ってしまう。

、のあとに何が続くのか、私たちは結ぶことができない。人を斬ったことがないからだ。
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