すとんこ

斬、のすとんこのネタバレレビュー・内容・結末

斬、(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

パンフレット所有(監督サイン付!)

幕末の世、腕に覚えはあるが未だ人を斬ったことがない浪人・杢之進(=池松壮亮)が、人を斬ることを只ひたすらに拒絶し続けるって話☆

冒頭の果し合いを行う澤村(=塚本晋也)の登場シーンから不穏な雰囲気で、これから起こる凄惨な物語の始まりを暗示させます。
(鮮やかに「小手打ち」が炸裂し、相手側の手が無惨に斬られる描写はとても生々しい痛みが伝わります!)

しかし、主人公の杢之進は鑑賞者の期待を悉(ことごと)く裏切り続けます。
彼は武士の身でありながら、百姓の農作業を手伝い、百姓の若者・市助に剣術を教えながら平穏に暮らしています。
澤村の誘いで京都に武士として戦(いくさ)に馳せ参じようとした矢先に病に倒れたり(仮病の疑いアリ!)、若者らしく性的欲求を持ちながらも、百姓の娘・ゆう(=蒼井優)を抱くこともなく度々自慰行為をしたり、弟のように可愛がっていた市助が野盗の手にかかって殺されても敵討ちに行かないなど、フラストレーションがたまっていきます。

池松壮亮演じる杢之進というキャラクターは、事を成すだけの能力を持ちながらも、目の前の問題を棚上げしたり回避してしまう、現代社会の若者像を表している。
また、蒼井優演じるゆうは、若者を煽り、無責任に死地へと赴かせようとする人々を表しているように感じました。

そして、もうひとつの独自の理(ことわり)で行動する男、剣豪・澤村の存在が本作のキモと言えます。
杢之進を誘い、共に京都に行って戦おう(おそらく幕府軍と倒幕軍との戦)言いますが、なかなか真剣を抜いた戦いをしない杢之進を見るうちに、「コイツの本気を見てみたい」という好奇心に移行していきます。
(それゆえに野盗のと戦いの際、加勢のタイミングを逸してゆうが野党に強姦されてしまいます。コイツもなかなかヒドいヤツです)

「なんでお前らの思惑通りにオレが動かなくちゃいけないんだ!?
なんでお前らの圧力に屈しなければならないんだ!?」
そんな叫び声が聞こえてくるような一本(* ̄ー ̄)☆



○キャスト○
都築杢之進(つづきもくのしん):池松壮亮
ゆう:蒼井優
源田瀬左衛門:中村達也
市助:前田隆成
澤村次郎左衛門:塚本晋也
すとんこ

すとんこ