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斬、の教授のレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
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時代劇という表現自体が「現代への批評」という視点を持つ、ということを慣れ合い抜きに本作はまさに現代というものに作られるべき作品だ、というのが序盤からプンプンと匂い立つ。
タイトル「斬、」の「、」とはまさに「藤岡弘、」の「、」と同じく。
終わらない暴力の連鎖として表される。

暴力と隣接していながら、その暴力に対して認識しつつ目をそらす、あるいは、見て見ぬフリをする。あるいは、その暴力に向かう自らの衝動でしかない思慮のない感情を正当化する「時代」というもの。

とにかく映画全編に漂う空気と、描かれている人物それらが、まさに空気に翻弄される形でほぼほぼ完璧に描いてみせてくれる。

塚本晋也監督もそう。あるいはある時代から日本映画が描き続けてきた「暴力」のある種到達点に達したと思う傑作。

暴力への衝動や、「斬る」という行為や精神性は、世に定義づけられている「武士道」なんてものとは全く異質であるという、実に血の通った論理を展開する傑作。
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