大学で教鞭を振るいながらドキュメンタリー作家としても成功を収めた40代の女性で、順風満帆な生活を送るある日に母親から自身が13歳の時に書いた手紙を見つけたとの連絡を受けたジェニー。ところがそこに綴られた乗馬教室の男性コーチとの性的関係に心当たりがなく、困惑の中で記憶を頼りに当時を回想する様を描いたドラマ映画です。
差別や女性の問題に切り込むドキュメンタリーを多く手掛けてきた女性監督のジェニファー・フォックスが自身が受けた児童性的虐待の経験を基に作り上げたHBOフィルムズでの配信公開作品で、サンダンス映画祭で公開されると主演を務めたアカデミー賞女優ローラ・ダーンが熱演する物語が賞賛されて数々の映画賞にノミネートされました。
児童性的虐待というセンシティブなテーマを慎重に、それでも決して包み隠すことなく綴った物語で、加害者による狡猾な手口や被害者が自分を守るためにその記憶を書き換える様を悲痛に映します。そのいずれもが原題である「The Tale＝物語」であり、使いようによっては罠にも救いにもなる人が持つ想像力の表裏を克明に描いた一作です。
