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ヘイト・ユー・ギブのYYamadaのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
3.9
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
ヘイト・ユー・ギブ (2018)
◆主人公のポジション
人種差別が理由で幼なじみを失った
 女子高生
◆該当する人間感情 (24種の感情より)
 失望、憤慨、積極性、誇り

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・白人社会と共存していく方法を幼い頃から教え込まれてきた黒人の女子高生スター。白人ばかりの学校に通い白人のボーイフレンドと付き合う彼女は、自分が黒人であることを忘れたかのような毎日を送っていた。
・そんなある日、幼なじみが彼女の目の前で白人警官に射殺されてしまう。しかも警察はその警官の行為を正当化し、事件は事実と異なった報道をされていく。衝撃を受けたスターは、亡き親友のため社会の矛盾に立ち向かうことを決意するが…。

〈見処〉
①無実の友のために立ち上がった
 女子高生の勇気と希望の物語——
・『ヘイト・ユー・ギブ』(The Hate U Give)は2018年に製作されたドラマ映画。2017年に発刊され、アメリカで大きな反響を呼んだヤングアダルト小説『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』を原作としている。
・本作のタイトル「The Hate U Give」にて「U」となっているのは、それぞれの頭文字「thug」が「凶悪犯・悪い奴」を差すスラングとなるから。作中の会話で登場するラッパーの2PACは「thug life」というフレーズを愛用している。
・警官に無実の友人を殺されたアフリカ系少女が立ち上がる…2009年に起きた実話を下敷きにした青春ドラマの本作は、日本では惜しくも劇場未公開となったが、全米では映画批評集積サイトのRotten Tomatoesの批評家支持率が97%、平均点は10点満点で8.2点となるなど、ヒューマンドラマの傑作として、批評家から高く評価された。
・主演は『ハンガー・ゲーム』のアマンドラ・ステンバーグ。『最終絶叫計画』のレジーナ・ホール、『スーサイド・スクワッド』など映画出演も多い人気歌手コモンに加え『アベンジャーズ』シリーズでファルコン役を演じるアンソニー・マッキーら競演陣も見もの。監督は『ザ・ダイバー』のジョージ・ティルマン・Jr。

②本作が描く対立
・本作は主人公の女子高生スターを中心として、3つの対立が描かれている。
・1つ目が「人種差別の対立」。事件のきっかけとなった白人警官による発泡や、司法などの国家権力も、その対立が起因している。
・2つ目は「黒人社会間の対立」。進歩的なスターの家族と、A.マッキー扮する保守的思想のャングのキング・ファミリーの因縁に該当。
・3つ目は「社会に蔓延る無関心層」。スター通う高校の白人同級生たちが該当する。
・2020年にミネソタ州で発生したジョージ・フロイド事件を発端とした「Black Lives Matte」運動が米国大統領選になると思われながら、黒人によるトランプ票が前回選挙よりも増えたとする見方もあり、米国が抱える人種差別問題は、本作で描かれる3つの対立のように単純ではないようだ。

③結び…本作の見処は?
◎: 上映時間132分のいわゆる「長尺映画」でありながら、全く飽きずに鑑賞出来るのは、良質なファミリードラマのように、スターの家族が魅力的であるため。家族5名のキャラクターがしっかり描かれ、それぞれが人種差別問題と対峙している。
◎: 主人公のスターを演じるアマンドラ・ステンバーグは、人種問題を超越させるくらいの魅力を発揮。将来が楽しみな女優。
▲: スター一家とキング一家の複雑な関係設定によって、ただの遺恨映画に見えてしまうリスクを招いている。
×: 近年の人種差別を扱う映画は「黒人監督賞が描く、黒人社会の閉鎖的思想」の作品が多いと思う。本作でも黒人コミュニティの結束が中心、結局は、エセ・リベラルの無関心層との関係打破は描かれずじまい。『グリーンブック』のような白人監督が描く映画が黒人社会からバッシングされないようになるなど人種を越えた「歩み寄り」を望みたい。

④本作から得られる「人生の学び」
・憎まれることより、憎しみあうことが罪だ
・声を上げることは恥ではない。無関心こそが悪。
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