KeitaSakai

ヘイト・ユー・ギブのKeitaSakaiのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.5
近年、『デトロイト』や『グローリー/明日への行進』を始め、黒人差別にまつわる非常に優れた社会派芸術映画が多くなっていますが、“The Invisible Other: Caste in Tamil Cinema”というドキュメンタリーにおける「社会問題を扱う芸術映画は、既にその分野についての知識がある者にしか届かない」という名優ナーサルの発言からも受け取れるように、こういった作品が声を届けられるのは、既に人種差別に関心を持っている人たちだけです。歴史の授業に退屈している中学生が、エイヴァ・デュヴァーネイのドキュメンタリーを自発的に観に行くとは考えにくいです。それがいくら素晴らしい作品であろうと。

しかし本作は、元々ファンタジー小説に傾向していた若手作家が、本編でも説明されている通り、トゥーパック・シャクールの提唱した「THUG LIFE(The Hate U Give Little Infants Fucks Everybody)」という理念に基づいて、大学在学中から執筆していたYAノベルを原作とするティーンムービーです。即ち人種差別に大した関心を持っていない中高生をターゲットにした作品で、そこに子供にとって堅苦しい能書きなどないのです。
可愛い女子や格好いい男子が登場し、等身大の恋愛や友情や家族に関する悩みを紐解き、ジェームズ・ボールドウィンやマルコムXではなくトゥーパックを引用します。
また「なぜ警官が黒人を簡単に撃つのか」「どういった白人の発言が黒人を傷つけるのか」などの疑問を丁寧に解説するシーンもさりげなく入れられており、当事者ではない人間にもわかりやすい作りになっています。

つまりこの「娯楽映画」は「届く映画」なのです。確実に今すぐにでも劇場公開するべき作品です。