スチールラグ

ヘイト・ユー・ギブのスチールラグのネタバレレビュー・内容・結末

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

“ゲットー”という言葉を久しぶりに聞いた。
自分の住む街を収容所に例える少女のリアリティー。
描かれるのは人種問題だけではない。
ゲットーの貧困から生まれる犯罪、それを束ねるギャング団とも対立する。
そして、銃社会。市民も警官も常に撃たれるリスクと隣り合わせで生きている。
でも少女は知っている。問題の大元は制度ではなく、その向こうにある“憎しみ”であることを。
だからこそ、デモ隊にアジる少女の姿には個人的には違和感があった。少女の訴えは全く真摯な言葉であったが、結果的に群集の憎しみを助長することになっている気がする。

最も印象的だったのは終盤のシーンだった。
腰に差した銃を握りしめ、抜く寸前でこちらを睨みつける黒人ギャング。
銃口をこちらに向け、威嚇する二人の白人警官。
そして、今、初めて憎しみに目覚め、小さな手に銃を取る幼い弟。
この物語の全てが凝縮したようなこの緊迫した状況で、少女は、両手を上げ丸腰でその中に身をさらす。警官は銃口を下ろし、ギャングは握りしめた手を緩め、弟は銃を地面に置く。
命を懸けて、憎しみの連鎖を断ち切った瞬間だと思う。

このシーンを含めて物語の圧が強く、感動とか簡単な言葉で言い表せない。
劇中、警官の叔父が「事態は複雑だ」と語る。事実そうだと思う。我々日本人には理解しがたいことが多い。彼の国でも、こういった問題への理解が乏しい人たちが多いことも容易に推察できる。そういった人たちや我々にしっかり問題を提示するという意味合いでこの作品の意義は大きいと思う。

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