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心魔師のhorahukiのレビュー・感想・評価

心魔師(2018年製作の映画)
3.1
失血死した遺体が袋詰めにされ発見されるという猟奇事件を追ううちに、とある精神病院の秘密に行き着くサスペンスホラー。

『心魔師』というタイトルの意味を監督自身がわかってないというある意味凄い映画。明確な意味はないとか言ってるし。普通そんなことあるの?笑

窓の外で羽ばたく鳥を見つめながら手を差し出そうとする少女を映すことで映画を通してやろうとしてることを観客に伝えるファーストカットはわざとらしいけど嫌いじゃないし、その後も映像的に安っぽさをほとんど感じることなく最後まで観れた。

明け方の街並みや車道を捉える映像が多かったように思うけど、この夜明け前の薄暗い街並みに不思議な魅力があってノスタルジーというか哀愁的なものを感じて好きでした。そんな中をパトカーが走っていくとことか、何か個人的なツボをつかれるんですよね(笑)明け方というのもしっかり意味合いを持たせてたのかなとも思います。

それと精神病院内の雰囲気が凄く良かった。若い医師と6人の入院患者、そして看護師の老婆。全員が集まる朝食シーンなんて、ひとところに集まることのないような人たちが食卓を囲ってわけわかんない話に興じながら朝食を食べている姿が凄く異様に映る。そして患者の部屋へと通じる抜け穴。どこか横溝正史が描く名家のお屋敷的な雰囲気。そんな感じで全体的に雰囲気とか映像はかなり好きでした。

でもねー。某カルト宗教を思わせる会話やラジオ音声は本作の舞台となっている年代を観客に伝える以外に役割を持たないし、主人公の不眠症設定についても特に活かされることなく終わったように思います。というか本当に不眠症なんかな。あんだけBLACKBLACK噛んでたらそりゃ眠れんでしょうよ。むしろ寝たくないという意思を感じる。

主人公は正直かなりの異常者。冒頭カプセルホテルで目覚ましを鳴らした男を殺す勢いで殴り始めたり、上司に対しても何かと突っかかって喧嘩を売る。不眠症なんで睡眠を妨害されることに苛立ちを覚えているように思えたけど、前述のように不眠症設定ほぼスルーだから主人公のキャラクターがハリボテのように薄いものに感じてしまう。そして、その不眠症であること(もしくはそれに起因する社会への不適合)が物語的に少女に惹かれていく大きな理由になるはずなんだけど、前述の通りスルーなんで、なんか核心部分がよくわかんない。

「カンガエテハイケナイ」というのは序盤で言ってた「人に決して話せないような悪夢」の意味とかそんなことなんだろうけど、ここも着地点が特になかった気がする。心の魔に迫れてないように思うんですよね。

監督がタイトルの意味すらわかってない状態なのを考えると、製作現場がわけわかんないことになってたんじゃないかな。「こうこうこういう作品を作る」っていう方向性が製作陣でバラけちゃってるからこんな歪な物語になっちゃったように思います。雰囲気は凄く好きだったんですけどね〜私には何か良くわかんない映画でした。
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