さうすぽー

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのさうすぽーのレビュー・感想・評価

4.9
自己満足点 94点

親愛なる、製作スタッフおよびキャストの皆様。
お元気ですか?

こちらは感想レビューという形ですが、どういった形で今作の感想を語れば良いのか非常に迷ってしまい、せっかくなのでこの素晴らしかったヴァイオレット・エヴァーガーデンを製作したスタッフおよびキャストの皆様に敬意を表し、御手紙のような形式で感想を書かせていただきます。


さて、当初の公開日から約8ヶ月が経ち、本日遂に無事公開することが出来ましたね。
製作の最中、そして公開までいろいろと、本当にいろいろとあったと思います。
正直、自分も長く感じました。

そんな本作の率直な感想ですが、
"絶賛"や"感動"を表現する数多の言葉全てがチープに感じてしまう程、心が満たされました!
簡単な言葉ですが、8ヶ月間長く待って本当に良かったです!


まず、アニメーションの作画の美しさは本当に素晴らしいです!
特に、水の描写はシリーズで随一に感じます。
ヴァイオレットの後ろに映し出される海の光景や透明感溢れる噴水の水、寒々しい雨等、どれをとっても本当に美しいです。また、映画終盤のあの黄昏時の光が注ぐ海辺の情景は祝福を意味するかのような美しさで本当にうっとりしました。
何故こんなにも透明感のある美しい「水」が描けるのでしょうか?
本当に素敵でした。


背景美術も負けてないと思います。
非常に繊細で写実な街並みや島の情景は何度も実写のように感じてしまって、本当に脱帽です。
亡くなられた美術監督の渡邉さん、そしてそれを見事に引き継いだ美術スタッフ一同に拍手を贈りたいです。

また、登場人物の表情等にも感動しました。
特に、本作ではギルベルト少佐の行方や関係性が真っ正面から描かれているため、今までは比較的表情に乏しい事が多かったヴァイオレットが今までに無いくらい感情が爆発しており、悲しみの表情一つ一つを見ても涙に誘われます。


今までのヴァイオレット・エヴァーガーデンでは手紙を通じて「思いをどう伝えるか」という事にテーマをあてていましたが、今作では時が経ち、電話が普及する時代になったことで、手紙以外の形で思いを伝える場面も多かったです。
なので、テレビアニメ以上に「思いを伝える」という大切さが滲み出ている気がします。

ヴァイオレットは劇中で、「本当の気持ちは、伝えなければ解らない場合が多い」と言っていましたが、改めて人が相手に直接伝える事って簡単なようで凄く難しいですよね。
劇中に出てくるヴァイオレットもギルベルト少佐も、病気の子供のユリスも、本作だけてなく今までのシリーズで依頼したキャラ達も含めて、いざ思いを伝えたち人に直接面と向かって話すと反発してしまったり、何を伝えていいか解らなかったりしてしまいます。
しかし、それは本作のキャラだけじゃなくて僕らも同じです。
そう考えると「人は何故こんなにも不器用なんだろう」と心から感じてしまい非常に歯痒い気持ちになりますが、だからこそ人は手紙を書き、電話越しに話し、今ではSNSでやり取りをするのだと改めて再確認出来ました。

ですが、手紙や電話だけでなくやはり直接伝えるというのも非常に大切で、それもきちんと本作で描かれていたことにも非常に感銘を受けます。
時代が変わっても、伝える手段が変わっても、変わらないものがあるとするなら「思いを伝える大切さ」である事が映画を観て伝わってきました。

また、「思いを受け継ぐ」というのも本作のテーマになっているのも新鮮です。
冒頭ではヴァイオレットの時代から数十年が過ぎた現代になり、テレビアニメ10話で描かれたアンの孫が出て来て、アンの母に宛てられた手紙を見付ける場面、ユリスの代筆を引き受けたヴァイオレットの仕事を後半でアイリスが引き継いだりする等、残されたものから引き継ぐ姿は例の事件を乗り越えた製作スタッフの姿にも重なるところがありました。
あの事件の話を持ち出してしまい大変申し訳ないのですが、どうしてもそのテーマにそういった部分を重ねてしまいました。

でもだからこそ言いたいです。
遺されたもの、思い、しっかりと受け継いでいたと思います。


そして映画が終わり、TRUEが歌う主題歌が流れるエンドクレジットを観たときは言葉にならない、何とも言えない、少し寂しくも暖かい気持ちになりました。


製作されたスタッフ、キャストの方々、本当にお疲れ様でした。
素晴らしかったテレビアニメは、本作で見事に完結編として纏めきれていたと思います。
たくさんの苦難を乗り越えた本作は、僕を含めた多くの観客の心に届きました。

最後に、Twitterで書いたこの言葉をもう一度贈ります。

ありがとう、
あいしてる。


※2020年映画ベスト10「第1位」