kingyohime

凪待ちのkingyohimeのネタバレレビュー・内容・結末

凪待ち(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

好きな放送作家の都市ボーイズさんが紹介していたので興味をもって観た映画。
中々面白かったし、考えさせられる映画だった。

主人公はギャンブル依存症の男性で競輪にはまっている。
彼は同居中の恋人とその娘と共に、恋人の故郷へ移住する事にする。
そこは被災地である、海辺の町で、彼はそこで仕事を紹介してもらい再起をはかるが、職場の同僚が競輪をしているのをきっかけにまたギャンブルにはまってしまう。
夜間の学校に通う娘が幼馴染のクラスメートの少年と仲良くなる。
ある夜遅くまで遊んで娘が帰って来ないので、心配した母親と彼は娘を車で探し回る。
その車中でちょっとした事で口論になった二人。
母親を車からおろした後、娘は見つかり連れ帰るが母親はその間に殺されていた。
その事件をきっかけに、主人公の人生はまた暗転してしまうー。

都市ボーイズさんは主人公の事をクズだと言っていて、主人公自身も自分はクズだと言っている。
確かにそうだと思う。
そのお金を使うのか・・・というお金をギャンブルに使い、人の親切を何度も裏切っている。

ただ、彼は根っからの悪人じゃない。
じゃないと、年頃の娘があそこまで母親の恋人に懐く事はないし、母親の父親も彼を救おうとはしないと思う。
さらに、元同僚がいじめられていたのを助けたり・・・それで、前の職場は居づらくなったんだと思う。
どこかほっておけない、憎めない感じがある。
そんな人間が信じられないような事をしてしまう。
それは人格とは別の依存というもののなせる技で、それが恐い・・・と見ていて思った。

主人公を演じた香取慎吾が鬼気迫る演技で、うらぶれた様子を上手に醸し出していた。
いつもそんな感じじゃないだけに余計、なりきろうとしてるな・・・と感じた。
身体もそうだし、顔つきもどこかむくんでいてだらしない感じで、役のためにそういう風に身体を作ったのかな・・・と思った。

凪っていうのは普通の暮らしなのかな・・・と思う。
普通に働いて、毎月定期的に収入があって、貯金して、家族がいて・・・みたいな。
そういうのからドロップアウトしてしまった主人公の男性は自分から手を伸ばしてそれを手に入れようとしてない。
映画のタイトル通り「待ってる」。
自身の心の弱さから・・・と言ってしまえばそれまでだけど、この人はタイミングが悪いんだな・・・と思った。
本来なら人に助けてもらえるような人柄の人なのに・・・。
私はギャンブル依存症にはならなかったけど、どこか自分と重なる所があった。

エンドロールの映像も秀逸だった。
海の底に震災で出来たゴミのようなものが沈んでいる。
それを見ていて色んな事を考えた。
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