これは”落とし前”の話。
クズ男”郁男"を中心に、登場人物の誰もが誰かに借りや負い目があって、それをどんなカタチで返すか、”落とし前”をつけるか…の話だったと思う。
人は誰しも独りでは生きられない。
誰かの存在が助けになったり、時には迷惑なこともあったり、人とのかかわりが生きる理由になる。だから人に受けた施し、恩義、借りは返さねばならない。
それが”生きる”ってこと。
たとえ辛いことがあろうと、時間がかかろうとも…
津波で、家族を、家を、仕事を失った多くの人々がいる石巻が舞台だけに、そんなメッセージが重く響いた。
ただ、さすが白石監督。
性善的な人情ドラマではまとめない。
人間の弱さ、ズルさといった性根・傷をグリグリとほじくってくる。
嫌な現実から逃げ出したい…、こんなハズじゃない…、次こそ一発逆転できる！
郁夫は、そんな下衆な地獄迷走思考から立ち直るきっかけを掴めるか？！
ぶっちゃけ、話の途中では、どこまでクズなんだよ…と思ったりもしたけど。観賞後には、平穏で前向きな気持ちになれる良い物語と思えました。
事件の真相はちょっと強引な設定かなぁ…とは思ったけど、そこにも”せめてもの落とし前”をつける犯人の気持ちが感じられたのは救いだったかな。
香取慎吾、本作で新境地開拓になったんではないでしょうか？
コメディ役が多かった印象ですが、今後もハードな役どころが増えると良いですね。今後の白石作品にも出てほしい。
あと逆に、音尾琢真さんは、もはや出てくるだけでヤクザもん以外に見えない w（本作での職業は学校の先生なハズなのに…）
