Ryoma

凪待ちのRyomaのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.2
白石和彌監督作初鑑賞。香取さんの演技、感情の振れ幅が大きく暴力性に満ちた役柄の演技がとにかく凄すぎた。また、暗めな照明が主人公の陰鬱な感情とリンクしていたことやサスペンス要素も含みながらも重厚なヒューマンドラマ的要素が強めだったことからかなり引き込まれたし、綺麗事ではない実際に起こりうる事象や誰もに湧き上がるであろう感情が非常に現実的に違和感なく描かれていたように感じかなり感情を揺さぶられた。そして、嫉妬、羨望、卑下、憎悪、嫌悪、後悔など人間が誰しも少なからず内に秘めているであろう負の感情や腹黒いところが痛々しいほどに感じられ苦しかった。
人に本当の意味で無償で優しくできる人って実際どれくらいの人がいるのだろうかと思った。代償や損得、世間の目や固定観念、様々な障壁や自己防衛の感情が邪魔して本当の意味で実際に行動できる人は少ないのかもしれないなと感じた。理想の戯言、綺麗事と言われるかもしれないけれども、その人の過去をみることよりも今に目を向けてその人に向き合うことがより大切なのではと強く感じたし、少しでもそうあれる自分でありたいと思った。
間違った選択や行動を繰り返し幾度となく後悔してはまた同じ過ちを繰り返し堕ちるとこまで堕ちていき…それでも人は変われるのだろうか。という疑問を劇中ずっと問い続けられている気がした。ひとりの力で変わっていくことは決して容易ではないのかもしれないけれども、周りの人の助けや優しさがあればきっと変わっていけるんだと感じたし、そう信じていたい。
非常に重くずっしりくる作品だったけれども、雲間から差し込むわずかな光のような仄かな希望を感じるラストになんとか救われた気持ちになった。白石監督の他の作品も観てみたい。
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