木葉

凪待ちの木葉のレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.1
映画のテーマは喪失と再生。
生きることは苦悩の連続かもしれない。
人生を諦め、逃げ続け、ギャンブル依存症の郁男を演じる香取慎吾の大きな背中がスクリーンに映し出される。
大きな哀しみや苦しみをまとった身体に、次々と悲劇がなだれ込むように起きる。
自暴自棄になり、ギャンブルにのめり込む奥には深い喪失感と哀しみがある。
何かを埋めようとして、
やり直そうとして、
必死にもがき苦しむが、
暗い誘惑に負け、
底無し沼からなかなか抜け出せない。
喪失感や絶望を抱えている人たちと、
3.11の石巻が静かにリンクする。
同じ痛みや悲しみを纏った血の繋がらない人たちが、
やがてそっと、
郁男に手を差し伸べようとする。
実直に生きてきても平穏で穏やかな日々を暮らしていてもある日突然、天災や事故や病気、人の死、大きな裏切りのような荒波に心が飲み込まれることがある。
苦悩の中で、どう生きるのか。
痛みや苦しみを背負ったり、絶望を知っている人ほど、強い生命力を持っているのかもしれない。
映画自体もまだ復興途中の土地と人に真正面から向き合う。
終始重たくしんどく陰気な映画だが、
人の温もりが心の奥にまで沁み渡り、涙が止まらない。
人の愚かさ優しさ切なさを極限まで描き、ここまで投げやりで諦め荒みきり、パブリックイメージを覆す香取慎吾を見たことがない。
人と人との交わり、
苦しみ抜いた先にこそ微かな穏やかな光が差してくれるような、
深く温かな余韻に、心が救われる映画だ。
木葉

木葉