ぐっさん

凪待ちのぐっさんのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
5.0
2019/7/5札幌シネマフロンティアにて鑑賞。

 私も、この作品の主人公のようにダメ人間なので面白いというか、ガツンと心を打たれた作品。
 ストーリーもすごいし、人間ドラマの展開もすごい、「弧狼の血」などリアルな暴力を描いたらピカイチだと思っている白石和彌監督の演出もすごいけど、一番すごかったのはこの作品の主人公「木野本郁男」を演じた香取慎吾さんがすごすぎた!!この人本当に昔、慎吾ママやった人?と思わせるぐらいまったく新しい香取慎吾を見せてくれたなと実感させられた演技でした。

 とにかく、この作品の主人公「木野本郁男」がとにかくギャンブル依存症のダメ人間。
 でも、このダメ人間を見捨ててはいけないとする家族ぐるみの付き合いのパートナー亜弓やその娘美波や父、亜弓の実家のご近所さんや仕事仲間もこのダメ人間をちゃんとさせたいと協力しようとする姿がいい・・・けど各登場人物が訳ありで郁男と亜弓をささえようとするんだけども・・・ウラで起こっている出来事がわかってきてどんどんつながっていくと、とても切なくなってしまう。

 とくに、亜弓が殺されてしまうのですが、そのきっかけになるとこも切ない。そのあとから、せっかく東京を離れてちゃんと仕事を始めたのに・・・と思っていた主人公の行動もダメダメだし、いろいろな人の裏切りが始まっていく姿や裏の姿を観ていくとうわぁ~と思ってしまう。
 その演出の仕方も白石監督なので、暴力とリアリティの表現がさすがと思うほどすごかった。

 とくに、クライマックス手前あたりからは久々に映画館で泣いてしまいました。依存症の男の末路がこれと言わんばかりの後半の展開は驚きました。でも、最後まで見捨てようとしない人達もちゃんといるんだ。でも、その人達と一緒にいたら申し訳ないという主人公の葛藤する展開もすごかった。
 私も誰も信用できない時期があり、おかげさまで友人は少ないですが、見捨てないで友人でいてくれる人たちにちょっと感謝したいと改めて思った次第でございます。

 白石作品常連メンバーもよかったぁ~。今回は近所に住んでいてお世話してくれる小野寺さん役のリリーさんの演技あんなおじさん絶対いると思ったし、亜弓の実家の街の中学教師村上役の音尾さんの演技もすごかったぁ、ぜひご注目していただきたい。

 人間ドラマとしてもいいけど、この作品の舞台となる東北エリア。あの震災の爪痕がいまだに残っている中復興へ向けて進んでいるけど、厳しい現状をいくつかストーリーの中に入れてありこれも風化してはいけない出来事なので、注目してもらいたいしエンドロールの時に流れる映像は特に身に染みました。

 とにかく、家族ではないんだけど家族のように見えてくるでも、切ない人間ドラマです。最後の最後までいろいろな人たちの行動に注目していただきたい作品でした。
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