あくとる

凪待ちのあくとるのネタバレレビュー・内容・結末

凪待ち(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

随分久しぶりの邦画レビューとなりましたが、これは本当に見て良かったです。
前半は『不穏×依存=最高』のエンターテイメント。
そして後半は凄まじい圧で畳み掛けるような人間ドラマ回収。

どんなにろくでなしでダメで情けなくても。
人に頼りきっては裏切ってしまうクズだとしても。
それでも愛してくれる人がいる限りは生きていくしかない。
更正の希望がある限り、どんなにもがいても諦めてはならない。
そこに宮城県石巻の再生という大きな背景が見事に噛み合う。

人生に悩みがちな自分にとってはまさにカウンセリングのようでもありました。
果たしていつか人生に『凪』は来るのだろうか…。





何より驚いたのは主役である香取慎吾のはまりっぷり。
いつも心ここに在らずのようなのっそり感。
しかし、一度火がつくと抑えられない暴力性。
それでも根底には正義感の強い男という複雑な人間性を見事に体現。
なにより、こんなにクズなのに観客が見捨てない、応援してしまう主人公性、アイドル性。
まさにはまり役。

演者は皆すばらしかったです。
特に亜弓の元夫を演じる音尾さんや余命わずかな父親勝見を演じた吉澤健さんもグッと来る深みある演技で援護、場を一気に持っていきます。
総じて私が邦画に感じがちなセリフ臭さが全然無かったと思いました。
見事な脚本。





映画本編に文句はありませんが、『誰がなぜ殺した?』というミステリー要素を強調した宣伝は完全にミスだと思います。
この映画の肝は全くそこではないのに…。