やもさん

凪待ちのやもさんのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
3.9
久々に質の高い邦画を観たなぁ、という印象。
(ところでこのクソどうでもいいキャッチコピーを考えたのは誰ですかね。物語において誰が殺したとか動機とかは関係ない。本編見たのか?)

失業をきっかけにギャンブル依存症の男が恋人とその子どもと共に石巻に移り住む。恋人の死によって生じた喪失感を埋めようと更にギャンブルにのめり込んでいく。
簡単に言うとクズ男の再起の話。
主人公を信用してくれた恋人を裏切り続けてきた、主人公が最終的に信頼している人に裏切られる様はあまりにも皮肉だった。

作中においてセリフ数は少ないものの圧倒的存在感を放ったのは恋人の父。妻を震災で亡くし、娘を人災で亡くした。彼もまた人生における絶望のどん底な訳だが、いつまでも立ち直れずにいる主人公に救いの手を差し伸べるのである。それも一人の家族として。
この物語の背景にあるのは東日本大震災であり、町だけでなく住民にも深く傷跡を残しており、それは未だ癒えていない。そういった台詞やシーンが主張することなくさりげなく映される。ほとぼりが冷め、そしていよいよエンドロールになって震災による傷の深さ=海の深さを表すかのように海底の様子映され、静かに幕を閉じる。
まさに"凪"待ち。タイトル回収。
素晴らしい、感無量です。

ただ一つ残念なのが、音楽の使い方が荒すぎて余計に感じてしまった点ですね。
やもさん

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