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凪待ちのtomocoのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
3.9
凪待ち…風や波が穏やかになるのを待つの意。
重くリアルな作品を生み出すのが得意な、白石和彌監督と、国民的アイドルの香取慎吾タッグを組んだ意欲作。

普段の表情とは程遠い、ギャンブルにのめり込むクズ男を演じた、香取慎吾。
汚くみすぼらしい男(「彼女がその名を知らない鳥たち」の阿部サダヲと重なる)…アイドルらしからぬ姿をスクリーンで延々と見せられる。しかし違和感がなく、彼の演技たるともリアリティ・オンリー。
ギャンブルジャンキーでキレやすい男を、選んだ女も少々理解出来なかったが…。

物語はある事をきっかけに、どんどん堕落していく郁男の姿を映し続ける。
郁男を囲む周囲の環境も、その事をきっかけに敵対していく。
救いようのない怒りや、やりきれない思いを全てギャンブルに…。
そして、まさかのあいつが手のひら返し。
それでも、底辺まで成り下がった郁男でも、最後には手を差し伸べてくれるファミリーが存在していた。
改心=凪待ちなんだろな。

ずっと重い空気から一変、エンディング前の石巻の海を観た瞬間、何か縛られている様な感覚から解放された…そんな気がした。
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