マツシマ

凪待ちのマツシマのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
3.6
これが俺達の見たかった香取慎吾だッッッ!!!!!

私見ですが、香取慎吾さんはどれだけ笑っててもおどけてても「怖い」印象のある芸能人です
目に光がないというか、何やってても、たとえもし目の前に居ても、常に別のどこかを見ている感じがするというか
何を考えているのか分からない、そしてそれは決して明るいことではないんだろうというのは分かる…
そんな印象なのです

それが、表情の乏しいギャンブル中毒で
ヒモ同然のクズ男を演じるワケです
そらハマるって!!!!


仕事は不安定で収入が乏しいが、競輪と酒がやめられない中年イクオは、シングルマザーである恋人アユミ、その娘で不登校のミナミと神奈川県川崎で三人暮らし
アユミが父の病気を機に地元宮城の漁港町に帰ることになり、共に移住
小さな印刷会社で技術者として働くことに

競輪場のない地方、移住を機会に競輪から足を洗ったイクオだが、ある日同僚に違法賭博(ノミ屋)に連れて行かれたことからギャンブル熱が再燃

日常の歯車は少しずつ狂いだし、そしてとうとう悲劇の日が訪れる―


小さな町の小さな家庭の大きな悲劇
舞台のスケールが小さけば小さいほど、そのリアリティは高まり、悲劇は我がことのようにこちらの胸をえぐります

その悲劇への予感、悲劇の後の悲壮な日々から目が離せなくなるのは
白石監督の日常と悲劇を描く力なのでしょうか

登場人物達もちょうどいい具合に朴訥で胡散臭くて良い奴で嫌な奴で、味わいが素晴らしい

しっっっかし
まぁとにもかくにも
「香取慎吾演じるクズ」が
最高にクズい!!!
暗いしつまんねーし悶々としてるし何考えてるか分かんねーし
何こいつ!!!??

喪失と再生を描いた……との評判ですが
いやそもそもなんでこいつはこんな良くしてもらえる人が周りにいるの!?出会えてんの!?引っ叩くぞ!!!???
という思いになります

そのくらい魅力が、ない
マジでない全くない

これは凄いことなんです
香取慎吾のクズ演技の成せる業!

何度も酷い目に合い、その度に周りの深い深い無償の愛情に救われるのに、また再び何度も何度も間違える
その繰り返しの執拗さには舌を巻きました
そうだよ、そんな簡単に救われるかよ
ギャンブル中毒がそんな”決意”なんてフワッとしたもんで治るかよ
とことん周りの信頼と愛情を裏切って裏切って、自己嫌悪はするくせに、反省はするくせに、行動を変えはしない
そういう「クズの実在」を丹念に描いており、白石監督は変態だと思いました

とにかくこの香取慎吾は良い!!!

ただ、ムスッ……!としてるシーンは最高なんですが、大きな声を出す、感情を露わにするシーンは、雰囲気が霧散し本来の演技のマズさが出てしまうのでちょっと残念というかもったいないです
大きな声を出すな……頼むから……


リリー・フランキーさんはベストアクトではあるのですが、登場時間が極短い割に強烈なインパクトを残した宮崎吐夢さんが個人的にはMVPでした