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ヒトラーと戦った22日間のmaverickのレビュー・感想・評価

ヒトラーと戦った22日間(2018年製作の映画)
3.8
2018年のロシア映画。第二次世界大戦中に起きた、ナチスの強制収容所での脱出劇を描いた作品。事実に基づく物語だ。


ナチスドイツの悪行の数々。強制連行されたユダヤ人たちは様々な手段で殺されてゆく。虫けらのように、いとも簡単に奪われてゆく命。そこに人間の尊厳はない。だいぶショッキングな内容であり、間違いなく気分は憂鬱になる。こうして無残に殺された人々が大勢いたということ。こんな狂ったことを二度と繰り返してはならない。そのためにも本作のような作品は必要だ。

『ヒトラーと戦った22日間』という邦題は相応しくない。ナチスドイツが題材の作品に「ヒトラー」を付けるのは鉄板ではあるが、本作に関してはそれが効果的ではない。本作はナチスの強制収容所からの脱出劇を描いた作品であり、そこに至るまでの地獄のような日々で構成されている。「戦った」だと、受ける印象がまた違ってくる。もっと相応しいタイトルがあったはずだ。

作品のテーマとしては十分。衝撃的な内容は人間の尊厳の必要性を痛感させる。ただ残念なのは、物語としての出来があまり良くないということ。せっかくの痛烈なテーマが十二分に活かされていない。これで人間ドラマとしても優れていれば、もっと人々の脳裏に刻まれるような作品と成りえたはずなのに。人物をもっと掘り下げ、それぞれの人となりを見せることが必要だったと思う。非道な行いと、それにさらされる収容所の人々を見せることに終始してしまっている。そのインパクトは絶大だが、物語としては希薄となってしまった。ラストの描き方も良くない。ここはちょっとあざとさを感じてしまった。この監督は悲劇は描けるけど、感動を描くのは得意じゃないのかもしれない。本作から感じたのは悲劇だけだった。


我々はこうした悲惨な事実を教わってはいるけれど、このように作品として目にするのとでは感じ方も全然違う。こんなこと許されない、そう誰もが思うことだろう。平和の尊さを知るためにも、こうした負の歴史をしかと語り継いでいくべき。それを担った作品として、本作は評価したい。
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