MasaichiYaguchi

ヒトラーと戦った22日間のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ヒトラーと戦った22日間(2018年製作の映画)
3.7
実話を元に映画化された本作を観るまで、第2次世界大戦下でこのようなことが起こっていたことを知らなかった。
原題の〝Sobibor〟(ソビボル)はアウシュビッツと並ぶ絶滅収容所で、ここにソ連の軍人アレクサンドル・ペチェルスキーが移送されたところから物語は幕を開ける。
通称サーシャと呼ばれる主人公は実在の人物で、本作で描かれたことを含め、小説や漫画等の創作世界ならともかく、これ程波瀾万丈な人生を歩んだ人というのもいないのではないかと思う。
絶対強者が支配する不条理な世界で、常に死と隣り合わせの日々を送りながら彼は戦い続けている。
彼は過去の失敗の痛手を引き摺りながら、ソビボルで繰り広げられる〝地獄絵図〟を目の当たりにして再び奮起する。
絶滅収容所をモチーフにした他の作品同様、本作にも大量の死が登場する。
例に漏れずナチスが家畜の如くユダヤ人を殺戮していくのだが、そこには人間的感情はなく、恰も殺人マシーンを見ているようだ。
ただ本作では終盤に殺し合いが繰り広げられていて、そこに出てくる〝死〟は同じ死でも血が通った人間味のあるものだと思う。
ナチスのホロコーストに一矢報いた歴史秘話を描く本作は、一人の傑出した不屈の男の生き様と、名も無き人々の無償の勇気を浮き彫りにする。