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ヒトラーと戦った22日間のBigsのネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラーと戦った22日間(2018年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

凄まじい映画だった。

ナチスのソビボル強制収容所からの脱出劇を描く。ナチス、ヒトラーを題材とした映画は毎年数多く作らていて、その理由は言うまでもなく彼らが起こした行為が近現代最悪の愚行・凶行だからであり、それをなんとしても風化させない・伝え続けるということに表現者を駆り立てるのだろうと思う。
そこで本作、ナチス関連作品をたくさんチェックできているわけではないが、ユニークなアプローチをしており、それが本作の魅力であると思う。一つは、全編強制収容所内で繰り広げられ、とにかくナチスの残酷さ・下劣さ・愚かさをこれでもかと徹底的に描く。しかもこの非人間的な残酷性を発揮する人間(ナチス将校たち)は寧ろ"人間的"に描かれる。慣れてしまって何の疑問も持たずに、心底楽しそうに暴虐の限りを尽くす。この描写一つ一つが本当に嫌で、怒りが湧いてくる。(10人に1人を射殺するところで番号間違えちゃったよ〜みたいな感じでふざけながら殺していたり、脱出前日の宴会の描写が最悪だった。)しかし、非常な嫌悪感を抱く一方で、どこか自分にも当てはまる気もして、権力を与えられた時に自分はどうなるか、身の周りの人はどうなるかとも想像してしまう。
本作のユニークな点のもう一つは、史実でありながら脱出が成功するというカタルシスがあること。ナチス関連の映画は、基本的には終戦を迎えることで終わりとなることが多いが、史実ベースで復讐が成功するのは珍しいと思う。それ故に終盤は次々とナチス将校に復讐でき、それまでの怒りが強いほどカタルシスを得られる構造になっており、映画としてのエンタメ性が担保されていると思う。但し、単純に良かったね(勿論現実は悲惨極まりなかったため)とならないように、ラストの字幕でこの出来事の顛末も示され、「脱出した内の150人は近隣住民に殺害された」との記述にまた恐ろしさを感じる。パンフで監督が「賛否両論となることも覚悟で描いた」と書いてあったが、それも納得できるほど復讐も徹底的なゴア描写で描く。最も印象的だったのが、最初のハンマーで殴るシーン。殴る途中は直接見せないので、映さないのかと思ったら、スイカ割り状態の頭が映って驚いた。それまでの怒りを共有していれば尤もだと思う一方で、こちらの行為も悍ましさを感じさせ、単純なヒロイズムとは距離を置いていたと思う。
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