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ヒトラーと戦った22日間のBluegeneのレビュー・感想・評価

ヒトラーと戦った22日間(2018年製作の映画)
3.8
最近、ホロコーストやナチスがらみの映画の邦題はなんでも「ヒトラー」がついてるような気がするが、この映画も特にヒトラーは出てこない。原題は ”Sobibor”、現在のポーランドにあったソビボル絶滅収容所で1943年に起こった集団蜂起事件を題材にした作品である。これはなぜかロシアの映画なのだが、蜂起のリーダー格だったサーシャがユダヤ系ロシア人で赤軍の将校だったためではないかと思われる。

作品としてはちょっととっちらかった印象がある。特に冒頭、宝飾工のユダヤ人夫婦とその友人がクローズアップされるためその視点で描かれるのかと思ったのだが、彼らは早々に背景となる。ただ、このタイミングでサーシャがすぐに前面に出てこないため、なんとも中途半端な感じで混乱した。

もっともこれはロシアの俳優に馴染みがないことが原因だろう。サーシャ役のコンスタンチン・ハベンスキー(彼の監督デビュー作でもある)はロシアでは国民的俳優として有名なのだそうだ。なので少なくともロシアの観客は彼が主人公であると承知で見ており、なかなか前面に出ないのは「満を持して」登場させるための演出なのだ。

英米の映画だとナチス側にちょっといい人が混じってたりするし、司令官役のクリストファー・ランバートがそういうポジションなのかなと思っていた。が、この作品では徹頭徹尾ナチスは鬼畜のように描かれていて、ユダヤ人への虐待も陰湿で凄惨である。バランスを取るように、蜂起を起こした収容者たちの彼らへの復讐も壮絶だ。ちなみに女性がひとり、この辺りで帰って行きました( ̄▽ ̄;)

スローモーションの映像はちょっと古臭いかなあと思ったが、川靄の立ち込める風景やずっと煙を吐き続けている焼却炉など、印象的なシーンも多い。特にポーランド東部の寒々とした雰囲気を捉えているのはロシア映画ならではだろうか。
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