てっぺい

ドクター・スリープのてっぺいのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.0
【鼓動が止まない映画】
昔見たあの映画の続編。その感慨深いドキドキはもちろん、劇中にびっしり使われる鼓動音に緊張感マックス。これ以上ない名作への満載オマージュにも、色んな意味で自分の鼓動が鳴り止まない。
◆概要
ホラー映画「シャイニング」('80)の40年後を描いた続編。原作は、スティーブン・キングによる2013年発表の同名小説。出演は「プーと大人になった僕」のユアン・マクレガー、「グレイテスト・ショーマン」のレベッカ・ファーガソンら。監督・脚本はスティーブン・キング原作のNetflix映画「ジェラルドのゲーム」を手がけたマイク・フラナガン。
◆ストーリー
40年前、狂った父親に殺されかけたダニーは、トラウマを抱え、孤独に生きていた。そんな彼の周囲で連続殺人事件が発生。そこに現れた謎の少女アブラは、不思議な力でその事件を目撃したという。彼女とともにダニーが事件を追うと、40年前の惨劇が起きたホテルへとたどり着く。
◆感想
超ふんだんな名作オマージュに劇中ニヤケが止まらない。ホラーというより、前作よりもより“シャイニング”という能力を掘り下げ、そこから生まれる超能力の描写の連続が面白い。40年前の名作を、同じ原作者で完結させる、長さが全く気にならない150分。BGMの不気味さは、テイストが少し変わりつつも健在。

◆以下ネタバレ

◆オマージュ
冒頭の、画質も音質もおそらく前作そのままのワーナーブラザースクレジットにニヤリ。それに始まり、あの絨毯の幾何学模様が現れ、三輪車を漕ぐダニーを追うバックショット、そして237号室を振り向くダニーにニヤリ。ハロランから箱を授かる追加シーンにニヤリ。オーバールック・ホテルに向かう、川から山へと車を追っていく空撮の画角が完全にシャイニングのそれと合致、にニヤリ。エレベーターからの血流に双子の姉妹、そしてあの斧で破壊された扉へダンが顔を当てるシーンにはもう鳥肌。完全徹底されたオマージュにはもうスタンディングオベーション。(ただしジャックのゴーストは横顔までに留めて欲しかった)名作への愛が感じられて良かった。ちなみに、アブラの家の郵便ポスト?に1980の文字(シャイニングの公開年)を見つけた時にはガッツポーズした笑。
◆シャイニング
今作はシャイニングという能力に特化し掘り下げた事で、超能力バトルに発展する、前作を継承したホラーというよりは「X-MEN」シリーズに近い別軸映画の印象。ただしそのおかげで映像美や迫力は満点。宇宙に飛んだローズが俯瞰の地球を行くシーンはいつか想像した事のある映像の具現化だったし、それを追い払う一連も想像力を掻き立てる。個人的には追い払われたローズが車から転落するほど打ちのめされた、その映像表現が何気にリアルさがあって好きだった。
◆シャイニングの続き
まさか、ハロランから授かった棺箱で、あのバスタブの老婆を封じ込めていたとは!酒に溺れ、暴れる自分にあの父を感じ懺悔するダン。20歳の時にあのホラー顔の母(今作では普通になってたけど笑)を亡くしていた。別軸の映画感はあるもののそんな、前作からのその後が足されているのも、見ていて楽しかった。ちなみにダンの最期のシーン、母と見つめ合う回顧な映像はとても儚くて美しかった。
◆BGM
やたらと不気味な音をつけまくっていた前作とは少し異なり、なんといってもあの鼓動音。劇中何度も何度も聞こえてきた鼓動音に、緊張感が相当高まった。ダウンロードしたサントラにももちろん収録されてました笑。
◆思うこと
なぜ、同じ原作者なのに、前作と今作がこうもテイストが違うのだろうか。前作はまさにホラー映画であり、本作はがっつりホラーとは言い難い。前作では監督のスタンリーキューブリックが原作から中身を変えすぎてスティーブンキングから批判されたとあった。前作の原作も、本作のようにシャイニングという能力を掘り下げたものだったのだろうか。そういえば前作でなんの活躍もなく殺されたハロランは原作ではもっと何かしていただろうし、そのあたりに詳しい方がいたら、是非教えてください。
◆思うこと2
アブラの父がクロウに殺され、ビリーも自殺してしまった後、車中でダンとアブラがそれを悔やみ合うシーン。本作がホラー映画という位置付けだとすれば、家族一人友達一人殺されたところで“次の恐怖”へと話が進み、スルーされるケースが他のホラーでは多いと思う。警察を呼び、アブラへ電話する母のシーンも少しあったように、もしこの話が本当に起こったとして、当然周りがこう反応するはずという、いわば理詰めのリアルさが細部にあったと思う。なのでそれも含めて、本作は前作とは別物であり、ある意味非凡と平凡の差があったようにも思えた。

ダンが自決した事で完全に完結した本作。昔見たあの映画が、その後がプラスされ帰ってきた感覚。なんだかとても感慨深い映画でした。
ちなみに、スクリーンに忘れ物を取りに戻り出ようとすると、扉がいつのまにか完閉されててめちゃくちゃビビったことはここだけの記録にしておきます笑
◆トリビア
○原作のスティーブン・キングは、シリーズもの以外続編を書かず、本作が唯一の続編。(http://wwws.warnerbros.co.jp/doctor-sleep/index.html)
〇前作でダニーを演じたダニー・ロイドが、野球少年の父役としてカメオ出演している。(https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/2019-11-21-deep-talk-doctor-sleep)

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